リオサイロニン(T3/チロナミン)副作用ガイド|カット期用量・心血管/AFib/筋分解リスクとモニタリング【2026年版】

リオサイロニン(T3/チロナミン)副作用ガイド|カット期用量・心血管/AFib/筋分解リスクとモニタリング【2026年版】

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結論(3行)

  • T3(チロナミン/リオサイロニン)はT4より約4倍強力な活性型甲状腺ホルモンで、コンテスト直前のカット期に脂肪燃焼の底上げを狙って使われる薬剤。ただし単独使用は筋分解(カタボリック)を進めるため、必ずAAS(アナボリックステロイド)と併用し、4週前後の短期で運用するのが主流。
  • 用量は25μg/日から始めて段階的に増やし、最大でも75〜100μg/日まで。それを超えると心血管系の負荷(頻脈・血圧上昇・心房細動リスク)と筋カタボリックが急に重くなる。
  • 内因性甲状腺ホルモンは外因性T3で必ず一時的に抑制されるので、終了時のテーパリング(漸減)、終了後のTSH/Free T3/Free T4の採血モニタリング、心拍と血圧の自己測定はセットで設計する。心疾患・高齢・甲状腺疾患既往のある人は使うべきでない。

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1. T3(チロナミン)とは何か — 薬理の基本

T3は トリヨードサイロニン(triiodothyronine) という名前の通り、ヨウ素3個を持つ活性型の甲状腺ホルモン。一般に病院で処方される チラーヂンS(レボサイロキシン/T4) が「肝臓や末梢でT3に変換されてはじめて働く前駆体」なのに対し、T3は 変換を待たずにそのまま核内受容体に結合できる活性体

このため作用が速く強い。臨床的には甲状腺機能低下症の補充療法のうち「T4だけでは不十分なケース」に使われる薬で、海外では チロナミン(Tiromel)、シトメル(Cytomel)、リオサイロニンナトリウム(Liothyronine sodium) などの製品名で流通している。日本国内ではチロナミン®(武田)が承認薬として存在する。

ボディビル文脈で問題になるのは「治療用量を大きく超える領域でT3が脂肪燃焼ブースターとして使われている」現実。Persaniら(2023)の総説でも、市販甲状腺剤がアスリートやダイエット目的の自己投与で乱用されている実態が報告されている[3]。

1-1. T3とT4の違い(ざっくり比較)

項目 T3(リオサイロニン) T4(レボサイロキシン)
活性 そのまま受容体に結合(活性型) 体内でT3に脱ヨウ素されて初めて働く
効力 約4倍強い(同mg比) 基準
半減期 約2.5日(短め) 約7日(長い)
作用立ち上がり 速い(数時間〜) 遅い(数日〜数週)
体感の振れ 大きい(動悸・発汗を感じやすい) マイルド
カット期使用 こちらが主流 ほぼ使われない

短い半減期=血中濃度が上下しやすい=動悸や発汗が体感として出やすい、という性質がそのまま副作用の出やすさに直結している。

1-2. T3の作用機序(なぜ脂肪が燃えるのか)

T3が 甲状腺ホルモン受容体(TR-α/TR-β) に結合すると、ミトコンドリアの脱共役タンパク質(UCP)、Na⁺/K⁺-ATPase、脂肪酸酸化酵素などの遺伝子発現が引き上げられる。Mullurら(2014)の総説にあるように、結果として安静時代謝率(RMR)、産熱、脂肪酸動員、糖の利用が同時に上がる[1]。

脂肪燃焼にとっては有利だが、 同じスイッチが筋肉のタンパク質分解(プロテオリシス)も加速させる 点が重要。T3単独で減量に走ると除脂肪体重(LBM)が落ちるのは、この「全身の代謝亢進」が筋にも等しく効くからだ。

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2. なぜカット期にT3が使われるのか — AASスタックの中での位置づけ

ボディビルでT3が選ばれる理由は1つに集約される。 「カロリー欠損を深く取らずに、絞りを進めるための代謝のブースト」 として機能するから。

コンテスト直前の数週間は、すでに食事量が絞られていて、これ以上カロリーを削ると筋肉も道連れに落ちる局面が出てくる。ここで代謝側を持ち上げてやれば、食事の追加カットなしに体脂肪をもう一段削れる。チロナミンはその役割で使われる。

2-1. ダイエット薬としてのT3とは文脈が違う

世間一般で語られる「T3でダイエット」と、コンテストボディビルでの使い方は文脈が完全に別物。

文脈 使用者像 期間 用量 AAS併用 主な副作用懸念
ダイエット薬として(NG) 健康な一般人(特に女性) 数か月〜長期 中〜高用量を漫然と なし 筋分解・甲状腺機能停止・骨密度低下
カット期スタックの一部 コンテスト出場予定の中上級者 4週前後 25→75μg程度 必ず併用(テスト+カット系) 心血管・筋分解・リバウンド

この記事は 後者の文脈 で書く。T3を「とりあえず痩せたいから」と単独で使う発想は、ボディビルの世界では否定される。理由はシンプルで、 T3単独は筋分解が進む(後述)。

2-2. AASを併用する目的は「筋温存」

T3が引き起こす全身の代謝亢進は、筋肉のタンパク質分解も同時に進める。Persaniら(2023)も、甲状腺ホルモン乱用の臨床所見として筋肉量減少と筋力低下を挙げている[3]。

ここでテストステロン、マステロン、トレンボロン、アナバーといった アナボリック作用が強い(タンパク質合成を引き上げる)AAS と併用することで、分解と合成のバランスを「合成側」に寄せる。これがコンテストボディビルにおけるT3+AASスタックの設計意図。

逆に言えば、AASを使わずにT3だけを盛るのは、設計として成立していない。減量ではあるが、筋肉も等しく落ちる「やせ細り」になりやすい。

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3. 用量レンジ — 初心者25μg/日から、上級者でも100μg/日まで

T3の用量は経験レベルと体格、サイクルの目的、併用AASの種類で決まる。 「もっと盛れば速く絞れる」は誤り で、100μg/日を超えた領域は副作用カーブが急に立ち上がる(Irwigら2020、Persaniら2023の報告と整合する印象)[3][4]。

3-1. 用量別の目安表(あくまで一般情報)

レベル 開始量 ピーク用量 期間 体感の出方
初心者 12.5〜25μg/日 50μg/日まで 3〜4週 動悸・発汗が出やすいので低用量で慣らす
中級者 25μg/日 50〜75μg/日 4週 カット期4週限定で運用
上級者 25μg/日 75〜100μg/日 4〜6週 コンテスト直前6週
100μg超 推奨されない領域。心房細動・筋分解リスクが急上昇

医療用の補充療法ではT3は通常 25〜75μg/日の範囲 で処方される(チロナミン®添付文書ベース)。ボディビル文脈の「100μg/日」はすでに治療用量の上限を超えている領域だという認識は持っておきたい。

3-2. 1日2〜3回に分割する理由

T3の半減期は約2.5日と短く、 1日1回でまとめて飲むと血中濃度のピークが高くなりすぎて、動悸や発汗の山が強く出る

このため実用的には、

  • 25μg/日 → 朝1回
  • 50μg/日 → 朝25・昼25
  • 75μg/日 → 朝25・昼25・夕25
  • 100μg/日 → 朝25・昼25・夕25 + 夜25(眠前)

のように 小分けにして飲む 設計が一般的。眠前用量は不眠を誘発しやすいので、入眠困難が出たら最後の1錠は前倒しにする。

3-3. 「いきなりピーク用量」は避ける

T3でやってはいけない筆頭が 「いきなり50μg/日や75μg/日から始める」。心拍が一気に跳ね上がり、動悸・手の震え・発汗が強く出て、本人もパニックになりやすい。

最低でも 3〜4日ごとに12.5〜25μgずつ増やす 漸増(タイトレーション)方式が安全。終了時も同じく、急にゼロにせず数日かけて減らすテーパリングを必ず入れる。

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4. サイクル設計 — 「ピラミッド型 4週」が標準

T3のサイクルは、用量を山型に上げ下げする 「ピラミッド型」 で設計するのが定番。低用量で開始 → ピーク → 同じ速度で減らす、という設計にすることで、内因性甲状腺ホルモンの抑制を最小限に抑える狙いがある。

4-1. 標準的な4週ピラミッドの一例(中級者用)

日数 用量(/日) 配分
Day 1〜3 25μg 朝のみ
Day 4〜6 50μg 朝25・昼25
Day 7〜21(2週間プラトー) 75μg 朝25・昼25・夕25
Day 22〜24 50μg 朝25・昼25
Day 25〜27 25μg 朝のみ
Day 28以降 0(オフ)

合計約4週。ピークが2週間、その前後に1週間ずつの増量・漸減期間を取る。

4-2. 「2週on→1週off」のローテーション派もいる

別の流派として、 2週間オン → 1週間オフを繰り返す ローテーションがある。理屈は「内因性甲状腺ホルモンの抑制を1週間オフで部分的に回復させる」。

ただし、薬理学的にはT3の半減期2.5日では オフ1週間で視床下部-下垂体-甲状腺軸(HPT軸)が完全に戻るわけではない 点に注意。このローテーションは「気休め」程度に捉え、終了後の採血と回復経過のモニタリングは省略してはいけない。

4-3. カット期4週限定の理由

T3を6週・8週と長く引っ張ると、

  • 内因性甲状腺の抑制がより深くなる
  • 筋分解が累積的に進む
  • 動悸・不眠の慢性化
  • 心血管リスクの累積暴露

がじわじわ重なってくる。 「短期間に集中投下、終わったら速やかに撤収」 がT3運用の基本方針。

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5. 副作用 — 9つのカテゴリーで把握する

T3の副作用は本質的に 「医学的な甲状腺機能亢進症(thyrotoxicosis)」をボディビル文脈で意図的に作り出している状態 と言える。Persaniら(2023)は、甲状腺ホルモンの誤用・乱用で生じる「人為的甲状腺中毒症(factitious thyrotoxicosis)」の臨床像を体系的にまとめている[3]。本記事の副作用記述はこの臨床像と整合する。

5-1. 内因性甲状腺機能の抑制(リバウンド)

外からT3を入れると、視床下部-下垂体-甲状腺軸(HPT軸)はネガティブフィードバックで抑制される。具体的には:

  • TSH(甲状腺刺激ホルモン) → 抑制(検出限界以下まで下がることが多い)
  • 内因性T4分泌 → 低下
  • 内因性T3分泌 → 低下

サイクル終了後、 数週間〜数か月かけてHPT軸は徐々に回復 するのが通常。多くの場合は4〜8週で正常化するが、長期高用量では回復が遅れたり、亜臨床的な機能低下が残るリスクが報告されている[3][4]。

回復期間中は「だるい・寒い・むくむ・体重がリバウンドする」という機能低下症状が出やすい。 このリバウンドを「T3を再投与すれば消える」と判断して連用に走る のがT3依存の典型パターンで、絶対に避ける。

5-2. 心血管系(頻脈・動悸・血圧上昇)

T3は心筋のβ受容体感受性を上げ、心拍数と心収縮力を増す。臨床的には頻脈、動悸、収縮期血圧上昇が出やすい。

  • 安静時心拍 → 通常+10〜20bpm程度上昇
  • 動悸の自覚
  • 期外収縮(脈の飛び)
  • 収縮期血圧の上昇

リスクの高い人(高血圧既往、心疾患、高齢、家族歴)では明らかに使うべきではない。

5-3. 心房細動(AFib)リスク

副作用として最も警戒すべきは 心房細動(AFib)。甲状腺ホルモン過剰状態(顕性・亜臨床問わず)は心房細動の独立危険因子で、亜臨床性甲状腺機能亢進症ですらAFibリスクを上げることが疫学研究で示されている。

ボディビル文脈の100μg/日領域は明確に「医学的な甲状腺機能亢進状態」を作り出しており、AFibの素地が一時的に作られていると理解する必要がある。 動悸が「規則的でなく不規則」「めまいや息切れを伴う」 場合は、即中止して循環器受診。

van Bokhorstら(2021)はEuropean Journal of Case Reports in Internal Medicineで、 29歳のボディビルダーがリオサイロニン誘発性甲状腺中毒性低カリウム性周期性麻痺で入院した症例 を報告している[2]。健康な若年男性でも、用量が高ければ重篤な臨床事象に発展しうる現実を示している。

5-4. 筋分解(高用量で顕著)

T3はタンパク質代謝を回転させる側面があり、合成も分解も両方上げる。 AASを併用しない、または併用が弱い状態で高用量T3を入れると、分解側が勝って筋肉が落ちる

カット期で食事カロリーをすでに絞っている状況だと、合成側の素材(必須アミノ酸・カロリー)が不足しやすく、 同じ用量でも筋分解が進みやすい。これが「T3単独運用」が推奨されない核心的な理由。

5-5. 高体温・発汗・不眠

代謝亢進そのものの帰結。

  • 体温が0.3〜0.5℃ほど上がる
  • 軽い発熱感、特に夕方〜夜
  • 寝汗、寝具がびっしょりになることも
  • 入眠困難、中途覚醒
  • 暑がり

夜の発汗と不眠はQOLを直撃する。睡眠が削れると回復が落ちて、結局カット期のパフォーマンスを下げる。 眠前用量を避ける・夕方に最後の1錠を前倒しする などで対応する。

5-6. 手の震え・神経過敏

末梢神経のβ刺激が上がるため、 微細な手の震え(振戦) が出ることがある。スプーンや箸を持つ手が震える、字が震えて書きにくい、というレベル。集中力低下、イライラ、不安感を伴うこともある。

これらは用量を1段下げると数日で軽くなることが多い。「最大用量を維持するために我慢する」設計は本末転倒で、QOLが落ちればトレーニングの質も食事管理も落ちる。

5-7. 消化器症状

腸蠕動の亢進により、

  • 軟便〜下痢
  • 食欲増進(または逆に食欲減退)
  • 胸焼け

が出やすい。下痢が続くと電解質バランスが崩れやすく、特にカリウムは要注意。van Bokhorstら(2021)の症例[2]も、低カリウム性麻痺がリオサイロニン暴露下で発症している。

5-8. 骨代謝への影響

長期・高用量の甲状腺ホルモン暴露は骨吸収を進め、骨密度を下げる方向に働く。短期4週のサイクルで臨床的に問題になることは少ないが、 何度もT3サイクルを反復する人 や、 女性や閉経後期の人 では骨密度の懸念が出てくる。

5-9. 髪・皮膚・体重

代謝亢進が長引くと、髪が細くなる、抜け毛が増えるという報告がある。逆にサイクル終了後は機能低下相が一時的に来るので、その期間にむくみ、体重リバウンド、皮膚の乾燥が出ることもある。

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6. 使うべきでない人 — 禁忌と注意

T3は 「健康で若くてベースの心血管が綺麗な人が、コンテスト直前の限定的な4週だけ使う」 前提でようやく現実的な薬剤。以下に当てはまる人は使ってはいけない。

6-1. 絶対避けるべきプロファイル

  • 心疾患の既往(虚血性心疾患、心房細動歴、心不全、心筋症)
  • コントロール不良の高血圧
  • 50歳以上(年齢とともにAFibリスクが立ち上がる)
  • 甲状腺疾患の既往(バセドウ、橋本病、甲状腺がん術後)
  • 糖尿病(代謝が乱れやすい)
  • 副腎機能不全(T3で代謝が上がるとコルチゾール需要が増える)
  • 妊娠・授乳中の女性
  • 摂食障害の既往(T3を「痩せ薬」として乱用するリスク)
  • 未成年

6-2. 慎重投与のプロファイル

  • 軽症の高血圧
  • 不整脈の既往(期外収縮レベル)
  • 抗うつ薬・抗不安薬を使用中
  • アルコール多量摂取者
  • カフェイン大量摂取者(コーヒー大量+T3で動悸が増幅)

迷ったら使わない、というのが最も低リスクな判断。

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7. クレンブテロール・アルブテロール・DNPとの比較

カット期の代謝アップ系として並び称される薬剤との比較。

薬剤 主な機序 期間 主な副作用 リスク水準
T3(チロナミン) 甲状腺受容体経由で代謝亢進 4週限定 心血管・筋分解・HPT抑制
クレンブテロール β2受容体刺激で熱産生 2週on/2週off 動悸・震え・心肥大
アルブテロール β2受容体刺激(クレンより弱め短半減期) 数週 動悸・震え 低〜中
DNP ミトコンドリア脱共役 数日〜短期 高熱で死亡例あり 極めて高い

DNPは死亡例があり、本記事では推奨も解説もしない。T3とクレンは作用機序がまったく違うが、副作用に「動悸・震え」が共通するため 同時併用すると心血管負荷が乗算的に増える。多くの場合、T3単独もしくはクレンとは時期をずらす運用が安全。

T3+クレン同時併用は中上級者向けで、心拍数のセルフモニタリングが前提。安静時心拍が常時90bpmを超えるなら片方を抜く。

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8. 採血モニタリング — 何を、いつ、どう測るか

T3を使うなら採血と自己モニタリングはセット。これを省略する運用は推奨しない。

8-1. 採血の必須項目

項目 何を見るか 推奨タイミング
TSH HPT軸の抑制度 開始前/終了4週後/終了8週後
Free T4 内因性T4の生産 開始前/終了4週後
Free T3 外因性+内因性のT3総量 開始前/サイクル中(2週目)/終了4週後
心電図 AFib・期外収縮の有無 既往ある人は開始前
電解質(K/Na/Cl) 下痢・発汗で崩れやすい サイクル中・症状出たら
コレステロール(HDL/LDL) 代謝亢進で変動 開始前/終了後

採血は内科クリニックで自費でも可能(健康保険適用は症状や臨床所見が必要)。最近は オンライン血液検査(在宅採血キット) で同等の項目をチェックできるサービスも増えている。

8-2. 自己モニタリング(毎日)

  • 起床時心拍(安静時心拍)
  • 起床時体温
  • 血圧(可能なら毎日同時刻)
  • 体重
  • 主観的な動悸・不眠・発汗の有無

これらを1日1回ノートかアプリに記録する。 「数値が連日 安静時心拍 100bpm超」「血圧 上が140超を維持」「期外収縮を自覚する」 などのサインが出たら即用量を下げるか、中止判断に入る。

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9. 中止判断ライン — どんな症状が出たら止めるか

「我慢して続ける」が一番危険。以下のいずれかが出たら その日のうちに中止 して、必要なら循環器または内科を受診。

9-1. 即中止サイン(救急要素含む)

  • 不規則な動悸(脈のリズムがバラバラ、特にめまい・息切れを伴う) → 心房細動疑い
  • 胸痛、左肩〜あごへの放散痛 → 心筋虚血疑い
  • 強いめまい、失神
  • 急激な手足の脱力(片側性) → 脳血管疾患の鑑別必要
  • 強い下痢が続いて脱水症状
  • 38℃を超える発熱が3日以上

van Bokhorstら(2021)の症例[2]のように、 健常な若年ボディビルダーでもT3暴露で重篤な周期性麻痺・低カリウム血症 に至り得る。「自分は若いし健康だから」は安全側の判断材料にならない。

9-2. 用量を下げるサイン

  • 安静時心拍が100bpm超を3日以上維持
  • 不眠で日中の集中力が明らかに落ちている
  • 手の震えで日常作業が困難
  • 食欲不振で減量どころでない
  • 強いイライラ・不安

これらは「副作用で減量効率が落ちている」シグナルなので、 半分量に落として様子を見る のが定石。

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10. サイクル終了後 — 何をするか

終了後の数週間は「機能低下相」を覚悟する。実用的に何をするか。

10-1. テーパリング(漸減)を必ず入れる

第4章のピラミッド設計のように、ピーク用量から数日かけて段階的に減らしてゼロに着地させる。 急に切るとリバウンドが強く出る

10-2. 終了後4週・8週で採血

TSH、Free T3、Free T4を測定。

  • 4週時点でTSHが正常範囲(0.4〜4.0 mIU/L程度)に戻っているか
  • 戻っていなければ8週時点で再検査
  • それでも戻らないなら甲状腺内科を受診

10-3. リバウンド期の食事と体重管理

代謝が一時的に低下する数週間は 食事のカロリーを少しだけ落とす(基礎代謝が下がっている分) か、活動量を保つ。「サイクル終了 → 食事戻す → 体重急増」になりやすいので、グラム計量での管理を続ける。

10-4. 「リバウンド対策にもう一度T3」は絶対NG

リバウンドの倦怠感・むくみを「T3切れ症状」と捉えて再投与に走るのが、T3依存への第一歩。Irwigら(2020)は甲状腺ホルモンの誤用・乱用が長期化した事例を報告しており、回復期はあくまで採血と時間で乗り越える[4]。

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11. 個人輸入の現実とリスク

T3製品(チロナミン、リオサイロニン、Tiromel、Cytomel等)は日本国内では処方薬。個人輸入代行を介した入手は厚労省の通達により本人使用目的・適量範囲なら適法だが、 使用は完全に自己責任 という前提を理解する必要がある。

  • 製品の真贋:正規メーカー品か、ジェネリックか、個人輸入経路で含量にばらつきがないか
  • 保管:湿度・光・温度管理で力価が落ちる薬剤
  • 採血や受診の段取り:何かあったときに駆け込める内科・循環器科を事前に決めておく
  • 健康保険:自己責任使用での副作用は健康保険診療の対象外になる場合がある

個人輸入代行サイトの商品はあくまで情報提供の性質であり、医師の診断・処方を代替するものではない。在庫や入荷状況、商品の選び方で迷ったらLINEで個別に確認するのが最短。

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ここはあくまで参考情報。実際の使用は採血と健康状態の確認、必要に応じて医師の診察を経た上での自己責任になる。

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Q1. T3とクレンブテロールはどっちが先に使うべき? A. 一般的には クレンを先(序盤)、T3を後半(直前4週) にする運用が多い。クレンはβ2受容体の感受性低下が2週で出るので2週on/2週offで使い、T3はピラミッド4週でコンテスト直前に着地させる、という時期ずらし設計が現実的。

Q2. T3だけ使ってAAS併用しないとどうなる? A. 体重は落ちるが除脂肪体重(LBM)も等しく落ちる「やせ細り」になりやすい。第5章で書いた通り、T3は筋タンパク質分解も上げるため、AASなしの単独運用はカット期の設計として推奨されない。

Q3. 女性がT3を使うのは? A. 用量は男性の半分以下から検討。ただし女性は基礎甲状腺機能が乱れやすく(橋本病・バセドウの有病率が高い)、骨代謝への影響もより慎重に見る必要がある。コンテストプレップでない目的での使用は強く非推奨。

Q4. 終了後にTSHが戻らない。どうすれば? A. 4週時点でTSHが正常域に戻らない場合、8週でも再検査。それでも戻らないなら甲状腺内科を受診。長期高用量で運用していた場合、回復に3〜6か月かかる例もある(Persaniら2023の臨床像と整合)[3]。

Q5. T3はドーピング検査にひっかかる? A. WADA禁止表(2026年版)では T3単体は禁止物質には指定されていない(2026年4月時点。最新リストは要確認)。ただし内因性T4/T3比が大きく崩れるため、検査で「外因性甲状腺ホルモン使用」を疑われる素地は作る。詳細はドーピング検出期間ガイド参照。

Q6. 甲状腺機能低下症で病院処方を受けている人がボディビル目的で増量するのは? A. 絶対NG。すでに補充療法を受けている人は 主治医の管理下 にあり、自己判断で用量を変えると過剰投与による心血管事故、低カリウム血症、骨密度低下のリスクが現実化する。van Bokhorstら(2021)の症例[2]のような事象を自分で再現することになる。

Q7. 動悸が出たらすぐ止めるべき? A. 規則正しい動悸(運動時の頻脈に近い)は用量を半分に下げて様子見。 不規則な動悸、息切れを伴う、めまいを伴う動悸はすぐ中止して循環器受診。心房細動の可能性を否定するためにECGを取ってもらう。

Q8. 「2週on→1週off」と「ピラミッド4週」どっちがいい? A. 4週限定で集中投下するならピラミッド型のほうが内因性甲状腺の落とし方をコントロールしやすい。長期(8週超)で引っ張る前提なら2週on/1週offのほうが累積暴露を抑えられる。ただし長期運用そのものを推奨しない立場で書いている。

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関連記事

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参考文献

[1] Mullur R, Liu YY, Brent GA. Thyroid hormone regulation of metabolism. Physiological Reviews. 2014. PMID: 24692351 [2] van Bokhorst QNE, Krul-Poel YHM, Smit DL, de Ronde W. A 29-year-old Bodybuilder with Liothyronine-induced Thyrotoxic Hypokalaemic Periodic Paralysis. European Journal of Case Reports in Internal Medicine. 2021. PMID: 33869098 [3] Persani L, dell'Acqua M, Ioakim S, Campi I. Factitious thyrotoxicosis and thyroid hormone misuse or abuse. Annales d'Endocrinologie. 2023. PMID: 36963754 [4] Irwig MS, Fleseriu M, Jonklaas J, et al. Off-label use and misuse of testosterone, growth hormone, thyroid hormone, and adrenal supplements: risks and costs of a growing problem. Endocrine Practice. 2020. PMID: 32163313

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免責事項

本記事は医薬品個人輸入代行サービスの情報提供を目的とした一般情報であり、個別の医療助言・診断・処方を代替するものではない。T3(リオサイロニン)を含む甲状腺ホルモン剤は、本来は医師の管理下で使用される処方薬であり、自己判断による使用には心血管事象、内分泌機能不全、代謝障害などのリスクが伴う。本記事の使用例・用量・サイクル例はボディビル領域の実践的な情報整理であり、特定の使用を推奨するものではない。使用前に内科または内分泌内科の診察を受け、ベースラインの採血を確認することを強く推奨する。 競技スポーツの選手は所属競技団体およびWADAの最新の禁止物質リストを必ず確認すること。 使用は自己責任で。妊娠・授乳中の女性、未成年、心疾患・甲状腺疾患の既往がある方は使用を避けてください。

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