SARMs(MK-2866)で肝機能数値が上がってしまった人の話

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リード

SARMs(選択的アンドロゲン受容体モジュレーター、筋肉や骨に選択的に作用するとされる化合物群)は「経口ステロイドよりも肝臓への負担が軽い」と紹介されることが多い。実際、海外のボディビル系フォーラムでも「肝毒性はマイルド」「PCT(ポストサイクルセラピー、サイクル後の回復療法)も簡略でいい」といった声が目立つ。

ただ、現場でやっている人たちの話を集めていくと、必ず一定数「血液検査でAST(アスパラギン酸アミノ基転移酵素、肝細胞の損傷で上昇する数値)とALT(アラニンアミノ基転移酵素、同じく肝臓由来)が上がった」という報告が出てくる。MK-2866(オスタリン、SARMsの中で最もポピュラーな化合物)でも例外ではない。

この記事では、20年このジャンルを追っている中の人と、ジム仲間の体験談をベースに、MK-2866を12週間使ってAST/ALTが基準値を超えてしまった人のケースを紹介する。何が原因と考えられるのか、どうリカバリーしたのか、そして今からMK-2866を使う人がどう備えたらいいのか、順に整理していく。

結論

SARMsは「肝毒性ゼロ」ではない。MK-2866を含むSARMs各種は、経口アナボリックステロイド(17α-アルキル化、肝臓で代謝されにくく構造改変された経口剤)と比べれば肝臓への負担は小さいとされるが、用量・期間・体質によってAST/ALTが基準値を超える例は実際にある。対策は「使う前と途中で採血を取る」「用量を低めから入る」「サイクルを長く引っ張らない」「ケア剤を併用する」の4つに集約される。

SARMs(MK-2866)で肝機能が上がった、というのはどういう状態か

血液検査の項目で、肝臓の状態を見る代表的な数値が以下の3つ。

  • AST(GOTとも呼ばれる)— 基準値の目安はおおむね10〜35 U/L
  • ALT(GPTとも呼ばれる)— 基準値の目安はおおむね5〜40 U/L
  • γ-GTP(ガンマ・グルタミルトランスペプチダーゼ、アルコールや薬物代謝の負荷で上がる)— 基準値の目安は男性で50 U/L以下

「肝機能が上がった」というのは、これらの数値が基準値の上限を超えた状態を指す。SARMsユーザーの体験談で多いのは、AST/ALTが基準値の2〜3倍程度に上昇するパターン。数値だけで言うと80〜120 U/L 前後の報告が目立つ。

ちなみに健康診断レベルの軽度上昇(基準値の1.5倍程度まで)は、激しい筋トレ後にも普通に出る。横紋筋(骨格筋)の破壊でASTが一時的に上がるからだ。なので「ASTだけが少し上がっている」場合は、トレーニング由来の可能性もある。ALTが同時に上がっていたら、これは肝臓の話と見ていい。

海外の臨床試験ではどう報告されているか

オスタリン(MK-2866)はGTx社が筋萎縮症患者向けに臨床試験を進めた化合物で、第2相試験のデータが公開されている。報告では、プラセボ群と比較してASTやALTがわずかに上昇する例が確認されているが、多くは無症候性で投薬中止には至らなかった、とされている。ただし試験で使われた用量は1mg〜3mg/日が中心で、ボディビル目的で使われる15〜25mg/日とは桁が違う。

つまり「海外の臨床試験では肝毒性は軽微」という情報をそのまま自分に当てはめると、用量レンジがズレているリスクがある。ここを混同しているユーザーは多い。

実際のケース:12週間サイクルでAST 142、ALT 168まで上がった

ここからは、ジム仲間の30代男性(以下Aさん)の体験談。本人の許可を得て、数値も含めて記載する。

サイクル内容

  • 化合物: MK-2866(オスタリン)15mg/日、朝1回
  • 期間: 12週間(当初予定は8週間だったが、伸びが良かったので延長)
  • 並行使用: なし(MK-2866単剤)
  • 食事: 増量期で1日4,000kcal前後、タンパク質180g
  • 飲酒: 週1〜2回、ビール中瓶2本程度
  • サプリ: マルチビタミン、フィッシュオイル、クレアチン

サイクル前の血液検査(ベースライン)

  • AST: 28 U/L(基準値内)
  • ALT: 32 U/L(基準値内)
  • γ-GTP: 41 U/L(基準値内)

健康診断レベルでは何の問題もない、ごく普通の30代男性の数値。

サイクル中(6週目)の血液検査

  • AST: 78 U/L(基準値の約2倍)
  • ALT: 94 U/L(基準値の約2.3倍)
  • γ-GTP: 89 U/L(基準値超え)

この時点で「ちょっと高いな」とは感じたが、自覚症状(疲労感・黄疸・尿の色)が一切なかったため、Aさんは継続を選んだ。ここが結果的に分かれ目になった。

サイクル終了直後(12週目)

  • AST: 142 U/L(基準値の約4倍)
  • ALT: 168 U/L(基準値の約4倍)
  • γ-GTP: 124 U/L(基準値の2倍超)

数値は明確に「軽度の肝障害」レンジに入っていた。それでも自覚症状はゼロ。ジムでのパフォーマンスも落ちていない。だからこそ怖い、というのが本人の弁。

中止後の回復

MK-2866を中止し、飲酒を止め、UDCA(ウルソデオキシコール酸、胆汁酸の一種で肝機能改善薬として処方される)とシリマリン(マリアアザミ由来のフラボノイド、欧州で肝臓サポート目的に長く使われている)を含むケア剤を6週間継続したところ、

  • 4週後: AST 52、ALT 61
  • 6週後: AST 34、ALT 38(ほぼベースライン)

という形で回復した。深刻な肝障害には至らなかったが、「無症状でここまで上がっていた」という事実は本人にとって大きな学びになった。

なぜSARMsで肝機能が上がるのか

「SARMsは肝臓に優しい」という説明は、半分正しくて半分誤解を生む。

経口ステロイドとの違い

経口アナボリックステロイド(メタンドロステノロン、オキシメトロン、スタノゾロール等)は、肝臓で分解されにくいよう17α-アルキル化という構造改変が施されている。これによって経口で有効性を保てる反面、肝細胞へのストレスが直接的にかかる。SARMsはこの構造を持たないため、確かに肝毒性のメカニズムは異なる。

SARMsの肝代謝経路

ただしSARMsも経口で摂取する化合物である以上、肝臓のCYP3A4(シトクロムP450酵素ファミリーの一つ、薬物代謝の主役)などを経由して代謝される。代謝負荷そのものはゼロではない。

特に以下の条件が重なると、肝機能数値が上昇しやすいと考えられている。

  • 用量が臨床試験レンジを大きく超えている(MK-2866で言えば10mg/日以上)
  • サイクルが長期化している(8週を超える)
  • 飲酒習慣がある(肝代謝の競合)
  • 他のサプリ・薬剤(プレワークアウト、痛み止め等)と併用している
  • もともと脂肪肝の傾向がある(健診で指摘されたことがある)

Aさんのケースは、用量こそ15mg/日と中庸だったが、12週間という期間と週1〜2回の飲酒が重なった結果と推測される。

「品質」要因も無視できない

個人輸入で出回るSARMs製品の中には、原末の純度や封入量が表記と異なるケースが過去に海外の独立検査機関(LGC Group等)で報告されてきた。表記が15mgでも、実際にはもっと多い、あるいは不純物が混入している可能性はゼロではない。これも肝代謝負荷を増やす要因になりうる。

今からMK-2866を使う人がやっておくべき4つの備え

Aさんのケースを踏まえて、現場の人たちが共通して言う「最低限これだけはやれ」という対策を4つ整理する。

1. サイクル開始前にベースラインの血液検査を取る

健診や人間ドックで、最低でもAST/ALT/γ-GTP/総ビリルビン/クレアチニンを測っておく。自分の「平常値」を知らないと、上がったかどうかも判断できない。最近は3,000〜5,000円前後で実施できる郵送血液検査サービスもある。

2. 用量は低めから始める

体験談を集めると、MK-2866の場合、10mg/日から始めて反応を見るユーザーが多い。15mgや20mgはそこから様子を見て上げる、というステップを踏むほうが安全側。一気に20mg/日でスタートするのは、肝機能の観点でも内分泌系の観点でもリスクが高い。

3. サイクル中(4〜6週目)に中間採血を取る

ここがAさんが踏まなかったステップ。中間採血でAST/ALTが基準値の2倍を超えていたら、用量を半減するか、サイクルを早めに切り上げる判断材料になる。「自覚症状がないから大丈夫」は、肝臓に関しては通用しない。肝臓は沈黙の臓器と呼ばれる所以がそこにある。

4. ケア剤を併用する

UDCA、シリマリン、NAC(N-アセチルシステイン、グルタチオン前駆体)などを含むケア剤を、サイクル中から併用するアプローチが一般化している。これらは肝細胞の保護・酸化ストレス軽減・胆汁排泄サポートを目的とした成分で、海外のボディビルコミュニティでは「経口サイクル中のスタックに含めるのが標準」という認識が広い。

当店では経口ステロイド・SARMs向け ケア剤セットプロ(¥21,000)を取り扱っており、UDCA・シリマリンを含む組み合わせで構成されている。サイクル前から準備しておくユーザーが多い。

サイクル後のフォローアップも忘れない

肝機能数値は、中止すれば多くの場合4〜8週間でベースラインに戻ると報告されている。ただ、戻りを確認しないまま次のサイクルに入ると、慢性的な数値上昇に気づけない。サイクル終了から4〜6週後にもう一度採血を取り、ベースラインに戻っていることを確認してから次のサイクルを検討するのが、現場で長くやっている人の共通認識になっている。

戻りが遅い、あるいは数値がさらに上がっているといった場合は、迷わず内科か消化器内科で相談したほうがいい。個人輸入薬剤の使用を医師に伝えることに抵抗があるかもしれないが、近年は理解のある医師も増えており、診断のためには正直に伝えるのが結果的に近道になる。

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FAQ

Q1. SARMsはアナボリックステロイドより肝臓に安全と聞きました。本当ですか? A. 構造的には17α-アルキル化されていないため、経口アナボリックステロイドより肝毒性のメカニズムは異なるとされています。ただし「ゼロ」ではなく、用量・期間・体質によってAST/ALTが上昇する例は実際に報告されています。「より軽い」と「無視していい」は別の話と考えるのが現実的です。

Q2. 自覚症状がなければ続けて大丈夫ですか? A. 肝臓は症状が出にくい臓器で、数値が基準値の3〜4倍まで上がっても無症状のケースは珍しくありません。自覚症状を判断基準にするのではなく、血液検査の数値で判断するのが基本です。

Q3. ケア剤(UDCA・シリマリン)を飲んでいれば用量を増やしても大丈夫ですか? A. ケア剤は肝臓のサポートを目的とした成分ですが、上がる数値を完全に抑えるものではありません。「ケア剤を飲んでいるから安全」という前提で用量を増やすのは、海外コミュニティでもリスクの高いアプローチとされています。

Q4. お酒を飲みながらサイクルしてもいいですか? A. 飲酒は肝代謝の負荷を増やし、AST/ALTの上昇要因として体験談でも繰り返し挙がります。サイクル中は控えるか、最小限にとどめるのが現場の共通認識です。

Q5. MK-2866が欠品中の場合、代替化合物はありますか? A. 当店のSARMs取り扱いとしては、LIGANDROL LGD4033、TESTLONE RAD140、ANDARINE S-4、MYOSTATIN Yk-11、CARDARINE GW501516、LGD-3033、S23、STENABOLIC SR9009 等を取り扱っています(在庫状況は商品ページで都度確認してください)。化合物ごとに作用特性や報告されている副作用プロファイルが異なるため、目的に合わせて選定するのが一般的です。

この記事で紹介した商品
OSTARINE Mk-2866 / 15mg * 50の商品ページを見る

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