AASでHDLが半分まで落ちた人の話

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リード

「健康診断でHDL(善玉コレステロール)が15まで落ちてた。基準値の半分以下。先生の顔色が変わって、急に長い話が始まった」——AAS(アナボリックステロイド、筋肉増強目的で使われる男性ホルモン製剤)を使っているコミュニティでは、こういう報告が定期的に上がってきます。

筋肥大の数字ばかり追いかけて、血液検査の脂質の項目は素通り。ベンチプレスは伸びたけれど、気付いたら血管の方が静かに痛んでいた。そんな失敗談です。

この記事では、実際にHDLが30から15まで落ちたサイクル経験者の話をベースに、なぜAASでHDLが下がるのか、どの種類のAASがリスクを上げやすいのか、そしてサイクル中に脂質を守るために実践されている対策(注射エステルの選択、オメガ3、有酸素運動)を整理します。20年やっているジムの中の人が、自分と仲間の血液検査の蓄積を踏まえて書きます。

結論

AASによるHDL低下は、特に経口剤(口から飲むタイプ)で顕著に起きる現象として、複数の臨床研究で確認されています。理由は、経口剤が肝臓を強く通過する設計(17α-アルキル化と呼ばれる構造)で、肝臓の脂質代謝酵素を狂わせるためです。対策はシンプルで、(1)経口を避けて注射エステル中心に組む、(2)EPA/DHA(オメガ3脂肪酸)を毎日入れる、(3)週3回以上の有酸素運動を入れる——この3点で多くの人が落差を緩和できています。サイクル前後の血液検査は必須です。

H2: 事例 — 8週でHDLが30から15まで落ちた話

仮にAさん(30代男性、トレ歴7年)とします。経口AASを含む8週サイクルを組み、終了直後の血液検査でHDLが15mg/dLまで下落していました。基準値は男性で40mg/dL以上が一般的で、15という数字は心血管リスクの観点から医師が即座に介入を勧めるレベルです。

サイクル前の数値

  • HDL: 52 mg/dL(基準内)
  • LDL: 110 mg/dL(基準内)
  • 中性脂肪: 88 mg/dL(基準内)
  • ALT/AST(肝酵素): いずれも基準内

特別に脂質代謝が悪い体質ではなく、ごく標準的なスタートラインでした。

サイクル内容

経口AAS(17α-アルキル化系、強い筋力ブースト目的)を4週、注射のテストステロンエナンセート(週500mg)を8週、というよくある「経口を先頭にぶつける」構成です。本人いわく「経口の4週で力の伸びがすごくて、ベンチが10kg上がった」とのこと。

終了時の数値

  • HDL: 15 mg/dL(基準の3分の1)
  • LDL: 168 mg/dL(基準超)
  • 中性脂肪: 145 mg/dL(基準超)
  • ALT: 軽度上昇

HDLが半分どころか3分の1まで沈み、LDLは逆に跳ね上がりました。本人の自覚症状はゼロで、鏡を見ても見た目はむしろ良くなっていた、というのが怖いところです。

サイクル終了8週後

経口を抜いて、注射のみのオフ期間+オメガ3摂取+有酸素再開で、HDLは32まで戻りました。完全回復ではないものの、最悪期からは脱出。「経口を入れた4週間が分岐点だった」と本人は振り返ります。

H2: なぜAASでHDLが下がるのか — 肝代謝の話

HDLが下がるメカニズムは、ざっくり言うと「肝臓の脂質処理ラインがAASによって書き換えられる」ことに尽きます。

経口剤が肝臓を強く通過する理由

経口で飲むAASは、そのままだと胃や肝臓を通過する間に分解されてしまいます。それを防ぐために、分子構造の17番目の炭素にアルキル基を付ける改造(17α-アルキル化)が施されています。この改造のおかげで経口で効くようになる代わりに、肝臓を非常に強く通過する性質を持ちます。

肝臓には「肝リパーゼ」という、HDLを分解する酵素があります。17α-アルキル化AASはこの肝リパーゼの活性を強く引き上げることが、複数の臨床試験で報告されています。結果、HDLが分解されて減り、LDLが相対的に増えます。

注射エステルが比較的マイルドな理由

注射のテストステロンエナンセートやシピオネートは、油性溶液として筋肉に入り、ゆっくり血中に放出されます。経口ほど肝臓に直接負荷をかけないため、HDL低下の度合いは経口より穏やかです。ただし「ゼロ」ではありません。テストステロン自体が脂質に影響するため、用量が高いと注射でもHDLは下がります。

海外のAGA治療と何が違うのか

参考までに、フィナステリドのような5αリダクターゼ阻害薬や、低用量のテストステロン補充療法(海外でTRTとして承認されている用法)では、HDL低下はあっても穏やかです。問題はあくまで「筋肥大目的の高用量+経口の追加」という使い方の場合に大きく出る、という構図です。

H2: 対策1 — 注射エステル中心の構成にする

「経口を抜いたら筋トレ系AASの意味がない」と思う人もいるかもしれませんが、実際には注射のテストステロンエステル単体でも筋量は十分に伸びます。経口は「短期で力の数字を伸ばす」ためのトッピング的な位置で、必須ではないというのが現場の実感です。

テストステロンエナンセートは、海外では男性ホルモン補充の標準的な選択肢の一つで、半減期が長く週1-2回の投与で安定した血中濃度を維持できます。同じ系統のシピオネートも似たような挙動です。

当店で取り扱っているテストステロンエナンセート(250mg/mL × 30mLアンプル)は、長期サイクルを組む人がベース(土台)として置く定番の規格です。価格は1セット¥18,000で、用量計算がしやすい250mg/mL濃度を採用しています。

テストステロンエナンセート 250mg/mL 30mLアンプル

H2: 対策2 — オメガ3(EPA/DHA)を毎日入れる

オメガ3脂肪酸、特にEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)は、心血管系の研究で長く検討されてきた成分です。中性脂肪を下げる効果と、HDLにマイルドな上昇方向の影響があることが報告されています。

AASを使っている人の間では、サイクル中は1日2-4g程度のEPA/DHAを摂る人が多いです。市販のフィッシュオイルサプリで足りるレベルです。食事で青魚(サバ、イワシ、サンマ)を週3回入れる人もいます。

注意点として、オメガ3は血液をやや薄くする方向に働くため、注射前後の内出血が増える人がいます。ぶつけたり擦ったりに普段より敏感になる、という程度の話ですが、知っておくと安心です。

H2: 対策3 — 週3回以上の有酸素を入れる

「筋トレ系の人は有酸素を嫌う」というのは一面では正しく(カタボリック懸念)、もう一面では誤解です。HDLを上げる最も確実な生活習慣の介入は、ウォーキングやジョギングのような中強度の有酸素運動を継続することだと、複数のガイドラインで示されています。

サイクル中であっても、週3回×30分の早歩きや、トレ後の20分のバイク漕ぎを入れるだけで、HDLの落差が緩和されたという報告は多いです。心拍数を110-130程度に維持できる強度で十分です。

筋肉を落としたくないなら、空腹時の長時間ランニングではなく、食後や筋トレ直後の短めの有酸素に絞るのが現実解です。

H2: 血液検査は必須 — タイミングと項目

ここまでの対策を入れていても、自分の数値を知らないと始まりません。サイクル前・サイクル中(4週目)・サイクル終了直後・PCT(サイクル後のリカバリ期間)終了後、の最低4回は血液検査を入れたいところです。

最低限見たい項目は以下です。

  • 脂質パネル: HDL、LDL、中性脂肪、総コレステロール
  • 肝機能: AST、ALT、γ-GTP
  • 腎機能: クレアチニン、eGFR
  • ホルモン: テストステロン(総、遊離)、E2(エストラジオール)、LH、FSH
  • 血算: 赤血球数、ヘマトクリット

日本の保険診療では一部の項目が出ない場合があるため、自費の人間ドックやオンライン血液検査サービスを使う人が増えています。

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FAQ

Q1. HDLが20以下になったら即サイクルを中断すべきですか? A. 数値だけで自動判断はできませんが、HDLが20を切っているのは心血管リスクの観点から無視できないラインです。医師に相談したうえで、経口の中止、有酸素の追加、オメガ3の摂取量増加などの介入を入れる人が多いです。自覚症状がなくても、血管の状態は静かに進行します。

Q2. サイクル終了後、HDLはどのくらいで戻りますか? A. 個人差が大きいですが、経口を抜いた状態であれば8-12週で元の値の8割程度まで戻る、という報告例が多いです。完全に元通りにならないケースもあり、特に長期間の高用量サイクルを繰り返した人は戻りが鈍くなる傾向があります。

Q3. 注射のテストステロンエナンセートだけならHDLは下がりませんか? A. 「下がらない」ではなく「下がり方が穏やか」というのが正確です。用量が500mg/週を超えると注射のみでもHDL低下は顕著になります。低-中用量で組み、オメガ3と有酸素を併用するのが現実的な防衛策です。

Q4. スタチン(LDL低下薬)を併用するのはアリですか? A. 海外の一部のコミュニティでは予防的にスタチンを併用する人もいますが、AASとの相互作用や肝臓への二重負荷の問題があり、独断で始めるのは推奨されません。脂質異常症の診断がついた場合に、医師の管理下で使う選択肢です。

Q5. 食事だけでHDLを守ることはできますか? A. オリーブオイル、ナッツ、青魚、アボカドなどの「良い脂質」を増やし、トランス脂肪酸を減らす食事は確かにHDLにプラスです。ただしAASによる肝リパーゼ活性の上昇は食事だけでは打ち消せないため、食事は土台、運動とサプリは補強、という多層構えが現実的です。

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