総テストステロンと遊離テスト|SHBG結合の影響と検査の読み方

総テストステロンと遊離テスト|SHBG結合の影響と検査の読み方

LINE登録で「ステロイドとSARMs徹底ガイド」を無料プレゼント

選び方・使い方・気をつけたいポイントを1冊にまとめたガイドを、LINE登録された方に無料でお渡ししています。

LINEで徹底ガイドを受け取る
登録無料 / ブロック自由

リード

採血で「総テストステロンは正常値です」と言われたのに、朝勃ちが減った、性欲が落ちた、疲労感が抜けない——そんな違和感を抱えたまま帰宅された方は少なくありません。じつはテストステロンの数値には「総テストステロン(Total-T)」と「遊離テストステロン(Free-T)」という2種類の指標があり、体に効いているのは後者の Free-T のほうです。総Tが基準内でも、結合タンパクであるSHBG(性ホルモン結合グロブリン)の値次第で、実際に使えるテストステロンはごくわずかしかない、というケースが起こり得ます。

本記事では、テストステロンの体内分布(SHBG結合・アルブミン結合・遊離)、Free-Tが「生理活性」を持つ理由、SHBGが高値・低値になる条件、日本のLOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)診療における Free-T 基準値、計算式として用いられる Vermeulen 式の概要までを中立的に整理します。

結論

血中テストステロンは大きく3つに分かれ、Total-Tのうち約60%はSHBG結合、約38%はアルブミン結合、残り約2%が遊離テストステロン(Free-T)として存在します。受容体に結合して作用を発揮するのは主に Free-T と、結合が緩いアルブミン結合分(両者をまとめてバイオアベイラブル・テストステロンと呼ぶ)です。SHBGが高い人では総Tが正常範囲でも Free-T が低下し、症状が出ることがあります。日本のLOH診療ガイドラインでは Free-T 8.5pg/mL未満が治療検討の目安とされており、総Tだけで判断すると見落としが起こりやすい——これが「数値の読み方」の核心です。

テストステロンは血中で3つの形に分かれている

血中のテストステロンは「全部が自由に動き回って細胞に作用している」わけではありません。分泌された直後から血漿中のタンパクに結合し、ごく一部だけが遊離した状態で存在します。一般に成人男性では次のような分布とされています。

  • SHBG結合分:約60%(強く結合し、受容体には届きにくい)
  • アルブミン結合分:約38%(結合が弱く、組織で解離して使われ得る)
  • 遊離テストステロン(Free-T):約2%(タンパクに結合していない素のホルモン)

SHBG(Sex Hormone-Binding Globulin、性ホルモン結合グロブリン)は肝臓で作られる糖タンパクで、テストステロンやエストラジオールと高い親和性で結合します。一度SHBGに捕まると解離しにくく、毛細血管を通って組織内に入っていくのが難しくなります。一方、アルブミン結合分は結合力が弱いため、組織側で必要に応じて切り離されて使われます。このため、臨床的に「使える分」を示す指標として、Free-T だけを取り出す方法と、Free-T + アルブミン結合分をまとめた「バイオアベイラブル・テストステロン」を見る方法の2通りがあります。

受容体に届くのは Free-T と「結合の緩い分」

アンドロゲン受容体に結合してタンパク合成や男性化作用を発揮するのは、最終的には遊離したテストステロン分子です。SHBGにがっちり結合した分子は受容体に近づきにくく、貯蔵プールに近い扱いとされます。したがって「体感に直結するのは Free-T」というのが現在の理解の主流です。総Tが同じ700ng/dLの2人がいても、SHBGが30と80では「使える量」がまるで違う、というのはここから来ています。

SHBGの値で総TとFree-Tはここまでズレる

SHBGは個人差・年齢差・併存疾患・薬剤の影響で大きく変動します。代表的な変動要因を整理すると以下のようになります。

SHBGが上昇する条件

  • 加齢(年1〜2%ずつ上昇する傾向)
  • 甲状腺機能亢進症
  • 肝疾患(慢性肝炎・肝硬変)
  • 経口エストロゲン製剤
  • 抗てんかん薬(フェニトイン、カルバマゼピン等)
  • 低栄養・極端な減量

SHBGが低下する条件

  • 肥満・メタボリック症候群
  • 2型糖尿病・インスリン抵抗性
  • 甲状腺機能低下症
  • 経口糖質コルチコイド
  • ネフローゼ症候群

SHBGが高い人(例:細身で加齢が進んだ男性)は、総Tが正常範囲でも Free-T が基準値を割り込みやすく、LOH症候群の症状が出ても「総T正常」で見送られるケースがあります。逆にSHBGが低い肥満男性では、総Tがやや低めでも Free-T は維持されていることがあり、こちらも単純な総T評価では判断を誤りやすい構造です。

「総T正常+症状あり」のパターンが起きる仕組み

加齢に伴ってSHBGが上昇する一方、精巣からのテストステロン分泌は徐々に低下します。総Tの低下スピードが緩やかでも、SHBG上昇により Free-T はそれ以上のペースで落ちることが知られています。複数の疫学研究で、加齢による Free-T 低下率が総Tの低下率より大きいと報告されており、これが「数値は正常なのに体感は明らかに違う」現象の生理学的な背景です。

日本のLOH診療における Free-T 基準値

日本泌尿器科学会・日本Men's Health医学会が公表しているLOH症候群診療の手引きでは、Free-T 8.5pg/mL 未満を「LOH症候群を考慮すべき値」、8.5〜11.8pg/mL を「境界域」と位置づけています。海外ガイドラインの多くが総Tを主軸に置く(例:米国内分泌学会は総T 264ng/dL未満を低値とする)のに対し、日本では Free-T を中心に評価する点が特徴です。

この背景には、日本人男性では総Tの絶対値が欧米よりやや高めに出る一方、SHBGの分布の違いから Free-T のほうが症状との相関が高いという臨床的知見が蓄積されてきた経緯があります。「総T 350ng/dL あるから問題なし」と言われても、Free-T が 7台であれば、日本の基準では介入対象に該当し得るということです。

採血のタイミングと測定法のクセ

テストステロンには日内変動があり、午前(おおむね7〜11時)に最も高く、午後から夕方にかけて低下します。検査値を安定して評価するため、原則として午前の採血が推奨されます。また、測定法によっても値はぶれます。Free-T を直接測定する手法(平衡透析法、限外濾過法)は精度が高い反面コストが高く、保険診療で広く使われているのはRIA(放射免疫測定)による直接法やアナログ法で、これらは平衡透析法と比べて値が低めに出る傾向が指摘されています。

Vermeulen 式(計算 Free-T)の概要

Free-T を直接測定する代わりに、総T・SHBG・アルブミン濃度から計算で求める方法が広く使われています。代表的なのが 1999 年に Vermeulen らが提案した計算式で、テストステロン・SHBG・アルブミン間の解離定数(Kt と Ka)に基づく質量作用の式から、計算 Free-T(cFree-T)と計算バイオアベイラブル T を導出します。

実務的には ISSAM(国際高齢男性医学会)などが公開している計算機に、総T(ng/dL または nmol/L)、SHBG(nmol/L)、アルブミン(g/dL)を入力すれば自動算出されます。RIA直接法による Free-T 測定値より、Vermeulen 式による cFree-T のほうが平衡透析法との一致度が高いとする報告が多く、海外では Free-T の評価は計算値を主にすることが推奨されています。日本の基準値(8.5pg/mL)はRIA直接法ベースである点に注意が必要で、計算値で評価する場合は別の基準を用いる必要があります。

自分で値を読むときの簡易チェック

検査結果票を見るときは、最低限以下の3点を確認すると判断材料が増えます。

1. 総T だけでなく Free-T(または計算 Free-T)が測られているか 2. 採血時刻(午前か午後か) 3. SHBG が測られているか(高値・低値の影響を切り分けられる)

総Tと Free-T の比率が大きく崩れている場合、SHBGの異常や測定法のクセを疑う余地があります。「総T正常です」だけで終わっている結果票には、Free-T と SHBG の追加測定を依頼する選択肢があります。

TRTを検討する前に押さえておきたいこと

Free-T が日本基準で低値、症状(性欲低下・勃起機能低下・疲労感・抑うつ気分・筋力低下など)が複数該当する場合、テストステロン補充療法(TRT)が選択肢に上がります。注射剤(エナンセート、シピオネート、プロピオネート等のエステル型)、外用ゲル、内服剤などの剤形があり、海外ではTRT用医薬品として承認されているものも多く存在します。

ただしTRTは、開始すれば内因性の分泌が抑制され(視床下部-下垂体-性腺軸:HPG軸の抑制)、長期化すれば精巣機能の縮小や精子形成低下を伴います。妊孕性を温存したい場合はhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)を併用するプロトコルが海外で広く用いられています。導入前に医師に相談し、ベースラインのホルモン採血(総T・Free-T・SHBG・LH・FSH・E2・PSA・血算等)を取っておくことが推奨されます。

この記事の内容をもっと体系的に知りたい方へ。「ステロイドとSARMs徹底ガイド」はLINE登録で無料で受け取れます。

LINEでガイドを受け取る

FAQ

Q1. 総Tが正常なのに体調が悪いのは気のせいですか? A. 必ずしも気のせいとは言えません。総Tが基準内でも、SHBGが高ければ Free-T が日本基準(8.5pg/mL)を割っていることがあります。Free-T と SHBG の追加測定を検討してください。

Q2. Free-T はどの時間帯に測ればよいですか? A. テストステロンは午前にピークを迎えるため、原則として午前7〜11時の採血が推奨されます。午後の測定値は低めに出る傾向があります。

Q3. RIA直接法の Free-T と計算 Free-T はどちらが正確ですか? A. 平衡透析法を基準とした比較では、Vermeulen式による計算 Free-T のほうが一致度が高いとする報告が多いです。ただし日本の基準値8.5pg/mLはRIA直接法を前提とした値です。

Q4. SHBGが高い場合、生活習慣で下げられますか? A. 肥満化・インスリン抵抗性の改善でSHBGは下がる方向に動きます。ただし加齢・甲状腺機能・服薬による上昇分は生活習慣だけでは戻りにくいことがあります。

Q5. Free-Tが低い=即TRTという判断でよいですか? A. いいえ。症状の有無、他の内分泌異常の除外、PSA・血算などのベースライン評価を経たうえで判断します。Free-T単独の数値だけで治療を決めるものではありません。

最後に

ステロイドとSARMsの全体像を1冊にまとめた「ステロイドとSARMs徹底ガイド」を、LINE登録で無料配布しています。

LINEで徹底ガイドを受け取る
ブログに戻る