ステロイド実体験ストーリー:僕がステロイドを6年間続けた話 ― 12サイクルで+13kgの筋肉を手に入れて、失ったもの ―
※Men’s Health誌 “Confession of a Steroid User”(2004)をもとにした要約・意訳です。
最初の12年間は「ナチュラル至上主義」だった
1996年の終わり、僕はすでに12年間、本気で筋トレを続けていた。
身長はおよそ173cm。高校の頃は体重43kg台のガリガリだったけれど、 トレーニングを始めてからはぐんぐん伸びて、一時期は最大で約104kgまで増えたこともある。 体脂肪を抑えた「見せる体」としてキープできるのはだいたい95kg前後だった。
- 腕周り:約43cm
- スクワット:230kgオーバー
- 片手ダンベルショルダープレス:約63kg
ジムでは「強い方の部類」に入り、ドーピング検査のあるボディビル大会でも何度か結果を残し、雑誌に載ったこともある。
それでも、鏡に映った自分を見るたびに思っていた。
「まだ足りない。もっとデカく、もっとカッコよくなれるはずだ」
同時に、ナチュラルでやれることは、もうほぼやり切ったとも感じていた。
27歳で踏み越えた一線
そんな僕が27歳のとき、ついにその一線を越える。
それまでジムでは「ステなんて絶対やるべきじゃない」と散々言ってきた立場だった。 それでも、情報を漁り、論文や掲示板を読み、 「うまくやればそこまで危険じゃない」と自分に言い聞かせた。
妻は当然反対した。それでも僕は説得した。
「ちゃんと調べている。医者が出す薬と成分は同じだ。
何かあればすぐやめる。危ない橋は渡らない」
そう言い切って、最初のサイクルを始めた。
1サイクル目:数週間で+9kg、重量は20〜30%アップ
正直に言うと、最初の数週間は夢のようだった。
- 体重は数週間で約9kg増加
- 主要種目の重量が軒並み20〜30%アップ
- 筋肉はパンパンに張り、「空気を入れて膨らませた」ような見た目に
そして性欲。テストステロンが跳ね上がっているのが分かるくらい libido が爆発した。 妻は「いい加減にして」と文句を言うほどだった。
ジムでも変化はすぐバレた。「最近デカくなったな」「何やってるんだ?」と聞かれるたびに、 僕はヘラヘラ笑ってごまかした。
代償:むくんだ顔、背中中のニキビ、そして「裏切り者」のレッテル
もちろん、良いことだけじゃない。
- 顔は水分を抱え込み、パンパンにむくんだ丸い顔に
- 背中と肩には、膿んだニキビがボコボコとできる
- シャワーのたびに自分の背中を見るのが嫌になる
でも、一番つらかったのは体の変化そのものじゃない。
僕はそれまで、ジムで「ステロイドなんて最低だ」と声高に批判していた側だった。 それが、ある日を境に突然デカくなったわけだ。当然、勘のいい仲間は気づく。
「お前、まさか始めたのか?」
否定しても、目が物語っている。数人の仲間は距離を置き、 何人か、大事な友人を失った。
6年後:12サイクル、+約13kg、理想の体に近づいたけれど
そこから6年間で約12サイクルを回した。
今の僕は、
- オフシーズン:約109kgの“ソリッド”な体重
- コンテスト期:約95kgまで絞ってステージに立つ
腕は約48cmまで太くなった。ケガが続いて重量更新は頭打ちだが、 「高校生の頃に夢見た体型」に、かなり近づいたのは事実だ。
数字だけ見れば、
「6年で+約13kgの筋肉」
を手に入れた計算になる。これだけ聞けば、「やっぱりステロイドはすごい」と思うかもしれない。
その裏側:年間の2/3はオン、数百万円とケツの中の“岩”
ただし、その裏側はきれいじゃない。
- ステロイドに使った金は、合計で約30,000ドル(数百万円)
- いまや年間の3分の2くらいは何らかの薬を打っている状態
- 何百回もケツに注射をしてきた結果、臀部には硬いしこり(瘢痕組織)がゴロゴロ残っている
初めて会う人には、体を見ただけで構えられる。 「怖そう」「横柄そう」と勝手にジャッジされることも多い。 中身の自分とは違うキャラを勝手に背負わされるのも、正直しんどい。
でも、そのへんはまだ笑い話にできるレベルだった。 本当に問題が表面化したのは、あるコンテスト前のサイクルだ。
血液検査:肝臓は「C型肝炎患者レベル」
あるコンテストに向けて、僕は経口ステロイドを多めに重ねたサイクルを組んだ。 仕上がりは良かった。絞りも乗りも抜群だった。
ただ、サイクル後に何となく不安になり、久しぶりに血液検査を受けた。
「肝臓の数値が、C型肝炎患者と同じくらい悪い。
今すぐ全部やめないと、本格的にまずい」
医者にそう言われ、さすがにこのときは冷や汗が出た。幸い、しばらく完全オフにしたことで数値はほぼ正常に戻った。
だけど、
「今回はたまたま戻っただけなんじゃないか?」
という不安は、今も頭のどこかに残っている。
家族との関係:妻と子どもに嘘をつき続けること
妻は今でも、はっきりこう言う。
「どこかのタイミングで“もう十分”って認めないと、
体だけじゃなく人生を壊すよ」
その言葉に、僕も表向きは同意している。「そのうち減らすさ」「健康もちゃんと考えてる」と。 でも現実には、完全にやめるつもりがない自分がいる。
上の子どもは、もう僕の変化に気づいている。 注射の痕や薬の瓶を見られないように隠し続けるのは、肉体的な副作用よりも、精神的にきつい。
ステロイドを考えている人へのメッセージ
もし、これを読んでいるあなたが「自分も1サイクルだけやってみようかな」と思っているなら、 僕が言えることははっきりしている。
1. 自分の“遺伝的な限界”に、まずほぼ到達しているか?
まだ伸びる余地があるうちにステを使うと、 「工夫して伸ばす力」を身につける前にショートカットに頼る癖がつく。
2. 23歳未満なら、やめておけ
自然にテストステロンが出まくる年齢だし、成長が終わっていない可能性もある。 成長板を閉じてしまうリスクまで背負う必要はない。
3. 「1回だけ」で終わる人は、ほとんどいない
「自分は例外だ」と思う人ほど、気づいたら僕みたいに 「6年・12サイクル・年間の2/3オン」になっている。
そして何より、
「デカくなること」が、健康や家族や仕事より本当に優先すべきことなのか?
を、冷静に考えてほしい。
僕は、ナチュラルで追い込み続けた12年間があるからこそ、 ステロイドがもたらしたものと、奪ったものの両方を自覚している。
- +13kgの筋肉
- 数百万円の出費
- 肝臓のダメージと、ケツの中のしこり
- 失った友人と、家族に対する後ろめたさ
それら全部を天秤にかけたうえで、
「それでも打つ」と覚悟を決められる人だけが、 本当はこの世界に足を踏み入れるべきなのかもしれない。