HGH(ソマトロピン)用量完全ガイド|2-10IU目的別レンジ・SC注射タイミング・サイクル設計・採血【2026年版】
この記事で分かること
ソマトロピン(成長ホルモン、いわゆるHGH)を使う際にいちばん最初にぶつかる壁が「結局1日何IU打てばいいのか」という用量の話。SNSや海外フォーラムを覗くと「2IUで十分」「いや5IUでないと体感ない」「10IU回さないとボディビル用量じゃない」と話がバラバラで、初めて触る人ほど判断材料が揃わずに止まる。
ここで書くのは、20年やっている中の人が、自分とジム仲間の経験、そして公開されている添付文書・FDA資料・臨床試験データを照らし合わせて整理した「目的別の用量レンジ」と「打つタイミング」「サイクルの長さ」「採血で何を見ればいいか」の実用ガイド。1日2IUの抗加齢/コンディショニング用途から、10IUでオフ期にバルクを狙う使い方まで、それぞれのレンジで何が起きやすく、どの数値を監視すべきかをひと記事でまとめる。
数字を覚えて帰ってもらうことより、「なぜその数字なのか」が分かるように書いた。読み終わった頃には、自分の目的に合うのが何IUで、なぜそれ以上は割に合わないのかが説明できるようになっているはず。
結論先出し
目的別の実用レンジは大まかに、コンディショニング/抗加齢で1日1.5-2IU、脂肪燃焼と肌・睡眠の質改善が主目的で2-4IU、筋肥大とリカバリ重視のボディビル用途で4-6IU、本格的なオフ期バルクや業界トップ層が走らせるレンジで6-10IUという四段階で考えるのが分かりやすい。注射は皮下注射(SC、皮膚と筋肉の間の脂肪層に打つ方法)で、朝起き抜けの空腹時か、トレ後または就寝前のどちらかに固定する。サイクル長は最低でも12週、現実的には16-24週連続で初めて見た目の変化が出る。採血ではIGF-1値(成長ホルモンが肝臓を刺激して分泌させる物質、効き目の代理指標)、空腹時血糖、HbA1c、TSH(甲状腺刺激ホルモン)を最低限フォローする。これだけ押さえれば事故率はかなり下げられる。
ソマトロピン(HGH)の用量を考える前提
そもそもソマトロピンとは何か
ソマトロピンは、組換えDNA技術で人工的に作られた成長ホルモン製剤のこと。化学的にはヒトの脳下垂体から自然に出ている成長ホルモンと同じ191アミノ酸の構造を持っていて、注射すると肝臓を経由してIGF-1という物質の分泌を促す。筋トレ用途で語られる「HGH」「成長ホルモン」「ジェノトロピン」「サイゼン」「ノルディトロピン」「ハイゲトロピン」「リオトロピン」などはすべてソマトロピン系。日本では小児の成長ホルモン分泌不全性低身長症やターナー症候群などに対する処方薬として承認されている。
IUとmgの換算
HGHの単位はIU(国際単位)で表記されることがほとんどだが、論文や添付文書ではmg表記も混ざる。換算は1mg ≒ 3IUが国際標準(WHO/USPの参照基準)。つまり10IU/日 ≒ 3.3mg/日、4IU/日 ≒ 1.33mg/日と覚えておけば、海外の文献を読むときに困らない。バイアル表記が「10iu」と書かれているものは、10IU = 約3.33mgが1バイアルに入っているという意味。
なぜ用量で効きが大きく変わるのか
成長ホルモンは「効き始める閾値」と「副作用が出始める閾値」が体感では結構近い。低用量(1-2IU)は主にコンディショニング・脂肪燃焼・睡眠の質に関わる効果が中心で、筋肥大には正直ほとんど寄与しない。3-4IUを超えると筋・腱・皮膚・内臓のリカバリ感が変わり始め、6IUを超えるとIGF-1値の上昇とともに筋肥大寄与が見える代わりに、むくみ・手根管症候群(手のしびれ)・血糖上昇のリスクが目立ってくる。つまり「自分の目的に対して必要十分な最低用量」を選ぶのが正解で、闇雲に上げると副作用だけが先に出る。
目的別の用量レンジ:四段階で考える
レンジ1:1日1.5-2IU(コンディショニング/抗加齢)
40代以降の体感改善や、肌の張り・睡眠の深さ・関節の調子などを底上げしたい層が選ぶゾーン。臨床的には成人成長ホルモン分泌不全症(AGHD)に対する補充療法でこの用量帯が使われていることが多く、FDAが承認しているソマトロピン製剤の成人補充療法用量も0.15-0.3mg/日(0.5-1IU/日)前後から始まる(参考:FDA添付文書Genotropin)。筋肥大は期待しない代わりに、副作用(むくみ・血糖上昇・関節痛)のリスクは最小に抑えられる。
レンジ2:1日2-4IU(脂肪燃焼+全身コンディション)
減量期に脂肪燃焼を後押ししつつ、トレーニングのリカバリも上げたい層が好むゾーン。IGF-1値は健常成人の高めの上限近くまで上がってくる。睡眠の質と肌のキメに体感が出やすく、長期で走らせやすいのもこのレンジ。コスト面でも10iuバイアルを2-3日に分けて使えるので、ボディビル用量に比べて月コストが現実的に収まる。
レンジ3:1日4-6IU(筋肥大+リカバリ)
オフ期に筋肥大を狙い、AAS(アナボリック・アンドロジェニック・ステロイド、いわゆる注射打ち薬)と組み合わせて使う層のスタンダード。このレンジから先は腱の太り(健側上腕二頭筋腱・アキレス腱)や顔まわり(顎・指先)の変化が出やすく、いわゆる「HGHらしい変化」が体感できるようになる。代わりに手根管症候群や夜間のしびれが出始める頻度も上がる。連続使用は16-24週の塊で組むのが標準。
レンジ4:1日6-10IU(本格バルク/業界用量)
ボディビル業界やフィジーク上位層が走らせるレンジ。筋肥大の寄与は明確に出る一方、内臓肥大(GHガット)、インスリン抵抗性の上昇、糖尿病リスク、軟骨・骨の肥厚など、長期で見た時のリスクが急に重くなる。短期(8-12週)で集中して使い、間にしっかり休止期間を取る運用が現実的。10IU/日を365日続ける運用は、健康面のコストとリターンが見合わない。
注射タイミング:いつ打つかで効きは変わる
皮下注射(SC)が基本
ソマトロピンは皮下注射(SC、subcutaneous)が基本。腹部(へその周り3cmは避ける)、太ももの前外側、上腕の外側のいずれかにインスリン用30G・8mm前後の注射針で浅く刺す。筋肉注射(IM)で打つと吸収が早すぎてピークが鋭く出るため、副作用(むくみ・血糖上昇)が出やすくなる。
朝の空腹時
最も古典的なタイミング。起床直後、まだ何も食べていない状態で打つ。理由は、自然な内因性GHの分泌ピークが朝方に終わった直後にあたり、IGF-1産生のために肝臓が「待機」している状態だから。インスリンが低い状態で打つので、GH本来の脂肪分解作用が最大限活きやすい。減量期はこのタイミングが定番。
トレーニング後
トレ直後はGHレセプターの感受性が上がっているとされる時間帯で、リカバリと筋合成への寄与を狙う場合に選ばれる。ボディビル用量帯では「朝3IU+トレ後3IU」のように分割する運用も多い。
就寝前
寝る前1-2時間前に打つと、深睡眠中の自然なGHパルス(脳から自然に分泌されるGHの波)に重ねる形になる。睡眠の質改善を主眼にする層、抗加齢用途の層が好む。ただしインスリン抵抗性が出やすい時間帯でもあるので、糖質を就寝直前に多く摂る人には不向き。
分割か単発か
体感としては、1日4IU以上を狙うなら朝とトレ後(または朝と就寝前)に分割した方が、副作用のピークが分散して楽になることが多い。1日2IUまでなら朝1回でも問題ない。
サイクル設計:何週間で組むか
最低12週、現実は16-24週
GHはAASのように「6週で見た目が変わる」薬ではない。IGF-1値が上がってから組織レベルで変化が出るまでに時間がかかるため、最低でも12週、見た目に変化を求めるなら16-24週連続で走らせる必要がある。「4週試して効果ないからやめる」は典型的な無駄遣い。
オン/オフのバランス
365日連続で打ち続けると、内因性GH分泌の抑制(自分の脳下垂体が出すGHが減る現象)、IGF-1の慢性高値による細胞増殖系のリスク、糖代謝の悪化が積み重なる。実用的には「16-24週オン → 8-12週オフ」を1年で1-2サイクル回す運用が落としどころ。オフ期は完全停止か、コンディショニング用量(1.5-2IU)に落として回す形が選ばれる。
AASとの組み方
オフ期(オフシーズン)のバルク狙いなら、テストステロン・エナンセートを土台に置いてHGHを4-6IU重ねるのがスタンダード。減量期(プレコンテスト)なら、テストステロン・プロピオネートやマステロン(ドロスタノロン)などのDHT派生(ジヒドロテストステロン由来の硬い質感を出すAAS)と、HGH 2-4IUを組み合わせる。
採血モニタリング:何を見るか
GHを使うなら、開始前と8-12週ごとの採血は事故防止のための必要経費だと考えた方がいい。最低限フォローしたい項目は次の通り。
IGF-1(効き目の代理指標)
GHが効いているかどうかは、血中GH濃度ではなく、肝臓で作られるIGF-1の濃度を見て判断する。健常成人の基準値は年齢で大きく変わるが、おおむね100-300ng/mLの範囲。GH使用中は上限近くか少し超える程度を狙うのが現実的なライン。基準値の2倍を超え続けると、長期的なリスク(細胞増殖系)が懸念される。
空腹時血糖・HbA1c
GHは血糖を上げる作用(インスリン抵抗性誘発)がある。使用中に空腹時血糖が110mg/dLを超えてくる、HbA1cが5.7%を超えてくるようなら、用量を下げるか、糖質摂取量を見直すサイン。FDAの承認時資料でもGH治療における耐糖能低下は明示されている副作用のひとつ。
TSH/FT4(甲状腺機能)
GHはT4からT3への変換を増やすことで、見かけ上のTSH変動を起こすことがある。元々の甲状腺機能が境界域の人は、GH開始後にTSH上昇が表面化することがあるので確認しておきたい。
IGFBP-3、その他
可能ならIGFBP-3(IGF-1の運搬タンパク質)、コルチゾール、プロラクチンも見ておくと、GH使用の影響をより立体的に把握できる。
副作用と中止判断のサイン
軽度なら様子見、出たら下げる、止めるべきラインは明確に止めるという三段階で考える。
様子見でいいもの
打ち始めの2-4週で出る軽いむくみ(顔・指先)、軽度の関節のこわばり、空腹感の増減、軽い手のしびれは、用量に体が慣れる過程で軽減することが多い。
用量を下げるべきサイン
夜間に手のしびれで目が覚める(手根管症候群)、関節痛が動作に支障を出す、空腹時血糖が110mg/dLを継続的に超える、IGF-1が基準上限の2倍を超えている。これらが出たら、まず用量を半分に落として2-4週様子を見る。
使うのをやめるべきサイン
しびれや関節痛が用量を下げても改善しない、HbA1cが6.0%を超える、心電図上の異常、視野の異常(下垂体周囲の問題を示唆)、説明のつかない急激な体重増加。これらは中止して医療機関の受診を検討するライン。
よくある質問(FAQ)
Q1. 1日2IUと4IUで体感はどれくらい違いますか?
A. 主観的には「2IUは肌・睡眠が変わる、4IUはそこに腱・関節のリカバリ感が乗る、6IUを超えると顔や手の見た目が変わってくる」という階層感がある。ただし2IUと4IUの差は緩やかで、数週間使い続けて初めて差が分かるレベル。
Q2. 朝とトレ後、どちらが正解ですか?
A. 減量と脂肪燃焼を主目的にするなら朝の空腹時。筋肥大とリカバリを主目的にするなら朝とトレ後の分割、または就寝前。1日1回しか打てないなら朝起き抜けが汎用性が高い。
Q3. IGF-1と組み合わせる意味はありますか?
A. ある。HGHは「肝臓に命令してIGF-1を作らせる薬」なので上流に効く。IGF-1製剤(LR3やDES)を直接補うと、HGHが届きにくい末梢組織にも直接作用させられる。ただし両方やると低血糖リスクが跳ねるので、採血と血糖チェックは必須。
Q4. 偽物を見分ける方法はありますか?
A. 信頼できる入手経路を選ぶこと、バイアルのロゴ・刻印・粉末の見た目(白くサラサラした粉が普通、黄色や塊状は要注意)、開始後数週間でIGF-1値を採血で確認すること。IGF-1がほとんど上がっていなければ、その製品は機能していない可能性が高い。
Q5. 女性が使う場合の用量は?
A. 男性の半分から1/3が目安。1日0.5-1.5IUが現実的なレンジ。女性は男性よりIGF-1感受性が高く、同じ用量でも顔の変化(顎・指先の肥厚)が出やすい。
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