PCTタイミング|エナンセート/プロピオネート/トレン別の開始日

PCTタイミング|エナンセート/プロピオネート/トレン別の開始日

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リード

サイクル終盤になると、多くの方が同じ疑問にぶつかります。「PCT(ポストサイクルセラピー=サイクル後の回復療法)は、いつから飲み始めればいいのか」という問いです。サイクル最終日の翌日でいいのか、1週間待つのか、3週間待つのか。ネット上の情報はバラバラで、参考にしているフォーラムによって答えが違うことも珍しくありません。

実はこの「開始日」は、感覚で決めるものではありません。使用したAAS(アナボリックステロイド)のエステル(薬物に結合した脂肪酸の長さ)によって、体内に残る期間が大きく違うからです。半減期の長いエナンセートと、短いプロピオネートでは、PCT開始日が2週間以上ズレます。

この記事では、エステル別の半減期データをもとに、テストステロン エナンセート/プロピオネート/トレンボロン/デカ(ナンドロロンデカノエート)それぞれのPCT開始タイミングを整理します。具体的な計算例も添えますので、自分のサイクル構成に当てはめてご活用ください。

結論:PCTはエステル排泄完了後に開始する

結論からお伝えします。PCT(SERMやhCGを使ってHPTA=視床下部-下垂体-精巣軸を立ち上げる回復プロトコル)の開始日は、使用したAASの最終投与日に、そのエステルの「血中残存がほぼゼロになる日数」を足した日です。

おおまかな目安は次の通りです。

  • テストステロン エナンセート/シピオネート:最終投与から14-21日後
  • テストステロン プロピオネート:最終投与から3-5日後
  • トレンボロン アセテート:最終投与から3-5日後
  • トレンボロン エナンセート:最終投与から14-21日後
  • ナンドロロン デカノエート(デカ):最終投与から28-42日後

エステル残存中にPCTを始めても、外因性のテストステロン(T=男性ホルモン)がまだ血中にあるため、SERM(選択的エストロゲン受容体調節薬、クロミッドやノルバデックスが代表)の刺激が空振りに終わります。

なぜエステルで開始日が決まるのか

AASを注射すると、体内ではエステル部分が酵素で切り離され、はじめて遊離したテストステロン本体やトレンボロン本体として作用します。エステルが長いほど切り離しに時間がかかり、血中濃度がゆっくり下がります。

PCTの目的は、外因性ホルモンが消えたあとに残っている「視床下部からのシグナル停止状態」を立ち上げ直すことです。つまり、まだ外因性Tがしっかり血中にある段階でSERMを飲んでも、視床下部は「Tはまだ十分ある」と判断して、本来出すべきLH(黄体形成ホルモン)/FSH(卵胞刺激ホルモン)のシグナルを再開しません。

ここで重要な目安が「半減期(half-life)」です。半減期とは、血中濃度が半分に下がるまでの時間のこと。およそ半減期5回分が経過すると、血中濃度は初期の3%程度まで下がり、薬理学的にはほぼ排泄完了とみなされます。

エステル別の半減期と排泄完了目安

各エステルの半減期は、添付文書や臨床薬理データで公表されています。代表的なものを整理します。

テストステロン エナンセート(テストE)

半減期はおよそ7-10日とされています。最終投与から半減期5回分を計算すると、35-50日後にほぼ排泄完了ということになります。

ただし、実務上のPCT開始は「最終投与から14-21日後」が定着しています。これは、半減期5回分を厳密に待つと2ヶ月近くPCT空白期間ができてしまい、その間に筋量・気力の落ち込みが大きくなるため、血中Tが「自分の生理的レベルを下回り始めた段階」でPCTを開始するほうが実利的だという経験則からです。

シピオネート(テストC)はエナンセートとほぼ同じ半減期挙動とされており、同じく14-21日後を目安にします。

テストステロン プロピオネート(テストP)

半減期はおよそ2日。半減期5回分で10日ですが、実務目安は最終投与から3-5日後にPCT開始です。プロピオネートは投与頻度が高い分、抜けも早く、PCTへの移行がスムーズです。

トレンボロン アセテート(トレンA)

半減期はおよそ2-3日とされ、PCT開始目安は最終投与から3-5日後。テストPと同じ感覚で移行できます。ただしトレンボロン自体はプロゲステロン受容体への作用やプロラクチン上昇の問題があり、SERM単独ではなくカベルゴリン併用が必要になるケースがあります。

トレンボロン エナンセート(トレンE)

半減期はおよそ7-10日でテストEと近い挙動です。PCT開始目安は最終投与から14-21日後。

ナンドロロン デカノエート(デカ)

半減期はおよそ15日と長く、半減期5回分なら75日、排泄完了まで2.5ヶ月かかる計算です。実務目安は最終投与から28-42日後(4-6週後)にPCT開始。

デカは「PCTが組みづらいエステル」として知られており、ハイブリッドアプローチ(最終投与の3-4週前から徐々にテストPに切り替えるテーパー戦略)を取る方も多くいます。

サイクル別PCT開始日の計算例

ここから、よくあるサイクル構成での具体的な開始日計算例を示します。

例1:テストE 500mg/週 × 12週

最終投与日:12週目の注射日(例:Day 84) PCT開始日:Day 84 + 14-21日 = Day 98-105 つまりサイクル終了から約2-3週間後に、クロミッド/ノルバデックスのプロトコルを開始します。

例2:テストP 100mg ED × 8週

最終投与日:8週目の最終日(例:Day 56) PCT開始日:Day 56 + 3-5日 = Day 59-61 サイクル終了から数日後、ほぼ間を置かずPCTに入ります。

例3:テストE 500mg/週 + トレンA 300mg/週 × 10週

このようなショートエステル×ロングエステルの混合サイクルでは、最も長いエステル(この場合テストE)を基準にPCT開始日を決めます。 最終投与日:Day 70 PCT開始日:Day 70 + 14-21日 = Day 84-91

なお、トレンAは最終週のうちにテーパー終了させ、PCT待機期間中はテストEの抜けを待つ形になります。

例4:デカ 400mg/週 + テストE 500mg/週 × 14週

最終投与日:Day 98 PCT開始日:Day 98 + 28-42日 = Day 126-140(デカ基準)

デカ単体やデカ主軸のサイクルでは、最終週の3-4週前からデカを抜き、テストPに切り替える「ブリッジ」を組むことで、PCT空白期間を短縮するプロトコルが海外フォーラムでは一般的です。

例5:テストE + デカ + ダイアナボル(キックスタート)

ダイアナボル(メタンジエノン)は経口で半減期が短い(約4.5-6時間)ため、PCT開始日の判断には影響しません。エナンセート/デカのうち長いほう(デカ)を基準にします。

PCT待機期間の過ごし方

エナンセートやデカでは、最終投与からPCT開始まで2-6週間の「待機期間」が発生します。この間はAASも入っていない、SERMも入っていない真空状態です。

待機期間中の選択肢は概ね2つです。

1. 完全に空ける:何も飲まずに体内T濃度の自然減少を待つ。シンプルだが気分・性欲の落ち込みが起こりやすい 2. hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)を使う:待機期間中に250-500IUを週2回程度投与し、睾丸の萎縮回復とTレベル維持を狙う方法。海外のPCTプロトコルで一般的に紹介されています

hCGは外因性LHアナログ(類似物質)として精巣を直接刺激しますが、PCT本番(SERM投与)の数日前には終了させるのが一般的なルールです。hCGが残ったままクロミッドを入れると、視床下部のフィードバックループの再起が遅れるためです。

PCT本体のプロトコル概要

PCT開始日が決まったら、SERMによる本体プロトコルに入ります。代表的なクロミフェン(クロミッド)単剤プロトコル例を示します。

  • Week 1:クロミッド 50mg × 2回/日
  • Week 2:クロミッド 50mg × 1回/日
  • Week 3-4:クロミッド 25mg × 1回/日

ノルバデックス(タモキシフェン)を併用するハイブリッドプロトコルや、エンクロミフェンを単剤で使うパターンなど、選択肢は複数あります。詳細は個別の記事で解説していますが、開始タイミングの考え方はどのプロトコルでも共通です。

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FAQ

Q1. PCT開始が早すぎるとどうなりますか? A. 外因性Tがまだ血中に十分残っている状態でSERMを飲んでも、視床下部は「Tが足りている」と判断してLH/FSHの再開シグナルを出しません。結果としてSERMの効果が空振りに終わり、本来回復に向かう時期が遅れる可能性があります。

Q2. 逆に開始が遅すぎる場合は? A. エナンセートで4週間以上待つと、待機期間中のTレベルが大きく落ち込み、性欲低下・倦怠感・気分の落ち込みなど、いわゆるPCTクラッシュ症状が長引く方が多い印象です。半減期5回分を厳密に待つよりも、実務目安(14-21日)で開始するほうが体感は良好という報告が多く見られます。

Q3. ミックスサイクル(複数エステル混合)の場合、開始日はどう決めますか? A. 最も半減期の長いエステルを基準に開始日を決めるのが原則です。テストE + テストPなら、テストE基準(14-21日後)。テストE + デカならデカ基準(28-42日後)です。

Q4. 半減期は個人差がありますか? A. 公表されている半減期は集団平均値です。体重・体脂肪率・肝機能・年齢などにより数日単位の個人差が出ます。目安日数の中央値(例:エナンセートなら17-18日後)を基本に、自分の体感(性欲・気力)と血液検査を参考に微調整される方が多いです。

Q5. hCGとSERMは同時に使えますか? A. プロトコルによります。サイクル中-PCT待機期間中はhCGで精巣を刺激し、PCT本体(SERM投与)の数日前にhCGを終了させるのが一般的です。SERM投与中の同時併用は、フィードバックループの再起を遅らせる可能性があるため、海外ガイドでは推奨されないことが多い構成です。

最後に

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