肝臓ケア剤を盛りすぎて逆に肝臓に負担かけた人の話

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リード

経口ステロイドや SARMs(サームス、選択的アンドロゲン受容体モジュレーター)を使うなら肝臓ケアは必須――そう聞いて、シリマリン、NAC(エヌアセチルシステイン)、UDCA(ウルソデオキシコール酸)、ALA(アルファリポ酸)、亜鉛、漢方の柴胡桂枝湯まで一気にスタックした結果、サイクル前より AST/ALT(肝機能を示す血液検査値)が上がってしまった――そんな相談がじわじわ増えています。「ケア剤は多ければ多いほど安全」というイメージとは逆の現象です。

この記事では、実際にあった肝臓ケアサプリ盛りすぎ事例をベースに、なぜ肝サポートを足しすぎると逆効果になり得るのか、どこを削って何を残すのかを整理します。読み終わるころには「全部入りは正解じゃない」という当たり前のラインが見えてくるはずです。

結論

肝臓ケアは「盛る」ものではなく「絞る」もの。経口 17α-アルキル化ステロイド(肝臓で分解されにくいよう加工されたタイプ)を使うサイクル中であれば、UDCA を軸に据えて、必要に応じてシリマリンを薄く乗せるくらいで構造的には十分なケースが多いと考えられています。逆に NAC・ALA・亜鉛・漢方を全部同時に高用量で入れると、肝臓自体の代謝負担が増え、サプリ性肝障害(supplement-induced liver injury)に分類される報告も海外で複数蓄積しています。

事例:ケア剤を5種同時に盛って血液検査が悪化した話

ここで紹介するのは、30代後半・トレーニング歴10年・経口アナバー(オキサンドロロン)20mg/日を6週間というスタックを組んだ人のケースです。本人いわく「肝臓を絶対に壊したくない」という思いから、以下のサプリを同時に走らせました。

  • シリマリン(ミルクシスル抽出物) 1日 600mg
  • NAC(エヌアセチルシステイン) 1日 1800mg
  • UDCA(ウルソデオキシコール酸) 1日 600mg
  • ALA(アルファリポ酸) 1日 600mg
  • 亜鉛 1日 50mg
  • 柴胡桂枝湯 1日 3包

サイクル開始2週目で、サイクル前のベースライン血液検査と比べて AST が 28→62、ALT が 31→78 まで上昇。本人は「ステロイドが想定以上にきつかったのか」と解釈してアナバーの用量を半減させましたが、数値はほぼ横ばいで下がらず、最終的にサイクルを中断したうえでサプリ側を見直すことになりました。

何が起きていたか

肝臓は薬物・サプリ・食品由来成分を代謝する臓器であり、入ってきた化合物のほぼすべてを CYP450(チトクロームP450、薬物代謝酵素群)で分解しています。AAS(アナボリックアンドロゲンステロイド)やサプリを同時に大量に放り込むと、この CYP450 ラインが混雑してボトルネックが起きます。

  • 単一の AAS だけなら肝臓は処理に専念できる
  • そこに NAC・ALA・シリマリン・漢方を高用量で重ねると、肝臓は AAS+5種の化合物を同時に処理する状態になる
  • 一部のサプリ(特に高用量のミルクシスル抽出物、漢方の柴胡を含む処方)は単独でも薬剤性肝障害(DILI)の報告がある

つまり「守るために入れたものが、守るべき臓器の仕事量を増やしていた」という構図でした。

原因:サプリ過剰が肝臓に負担をかける3つのメカニズム

1. 代謝処理の渋滞

経口で摂る化合物は、ほぼ全量が一度肝臓を経由します(初回通過効果)。肝臓は処理キャパに限界があり、5種類のサプリを高用量で並行投与すると、それぞれの代謝物が滞留し、結果として肝細胞のターンオーバーが乱れます。これは AAS 単独より、AAS+サプリ多剤併用のほうが肝酵素が上がりやすい一因と考えられています。

2. ハーブ・漢方の potency(効力)の見落とし

「天然・漢方=安心」というイメージは根強いですが、米国の DILIN(Drug-Induced Liver Injury Network)レジストリでは、肝障害報告の約2割がハーブ・サプリメント由来とされています。特にミルクシスル(シリマリン)、緑茶エキス高用量、ターメリック、柴胡を含む処方は単独報告例が複数あります。「ケア」目的で入れたものが、人によっては「原因」側に回り得ます。

3. 抗酸化剤の過剰によるレドックスバランスの崩壊

NAC や ALA は抗酸化剤として有名ですが、抗酸化作用は「足せば足すほど良い」ものではありません。細胞内の酸化還元バランス(レドックス)はホメオスタシスが取れているのが正常で、外から大量に抗酸化剤を入れると、逆に細胞のシグナル伝達を狂わせ得るとする報告が増えています。トレーニング適応(筋肥大)を阻害する可能性も指摘されており、ボディビル文脈では NAC 1日 1800mg のような高用量を常用するメリットは限定的です。

対策:最小限化のフレームワーク

ここからは「じゃあ何を残せばいいのか」を整理します。あくまで一般的なフレームであり、個別のサイクル設計や既往歴によって調整は必要です。

ステップ1:軸を1本に絞る

肝臓ケアの軸は UDCA(ウルソデオキシコール酸) に置くのが現実的です。UDCA は日本では胆汁うっ滞や慢性肝疾患の保険適用薬として長年処方されており、ボディビル界隈でも経口 AAS サイクル中の肝サポートとして広く使われてきました。ALT/AST/胆汁酸の動きを抑える方向に働くという報告がある一方、副作用プロファイルが比較的穏やかな点が選ばれる理由です。

実際の用量帯としては、サイクル中に1日 600mg〜900mg を 2〜3 回に分けて摂る人が多いようです(個人差大)。

ステップ2:必要なら薄くシリマリンを乗せる

シリマリン(ミルクシスル抽出物)を UDCA に追加する場合は、1日 300〜600mg 程度に抑え、ハイドーズで盛らないのが基本です。サイクル明けのテストで AST/ALT 戻りが遅いときの補助という位置づけが現実的で、平常時から常用する必然性は薄いとする見解もあります。

ステップ3:NAC・ALA・亜鉛・漢方は外す or 短期限定

  • NAC:アセトアミノフェン中毒の解毒剤として確立しているが、ボディビル文脈で常用する根拠は弱い。サイクル中の常用は不要というのが現実的なライン
  • ALA:血糖・末梢神経向けのエビデンスはあるが、肝臓ケア軸ではない。肝サポート目的での投入はオフ
  • 亜鉛:総合的に必要なミネラルだが、肝サポートとして 50mg/日 を常用すると銅とのバランスが崩れる。マルチビタミン規模で十分
  • 柴胡桂枝湯:柴胡を含む漢方は薬剤性肝障害(DILI)の症例報告が日本国内でも複数。「漢方だから安心」は通用しない

ステップ4:数値で評価する

サイクル前・サイクル中盤・サイクル後の3点で肝機能(AST/ALT/γ-GTP/ALP/総ビリルビン)を採血する。これがあれば「サプリが効いているのか負担を増やしているのか」を主観ではなくデータで判断できます。サイクルを組むなら採血はセットで考えるのが安全側です。

やってはいけない3つのパターン

1. 「ケア剤は多いほど安全」と信じて5種以上スタックする ― 本記事の事例そのもの。肝臓の仕事量が増える 2. 採血なしで「体感」だけで判断する ― 肝障害は自覚症状が出にくい。出てからでは遅い 3. サイクル明けまでサプリを継続する ― AAS 抜けたあとも高用量サプリを続けると、肝臓は休む暇がない。ポストサイクル(PCT)期はサプリ側も絞る

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FAQ

Q1. UDCA とシリマリンは同時に飲んで大丈夫ですか? A. 一般的には大きな相互作用は知られていません。ただし両方を上限近くまで盛る必要は乏しく、UDCA を主、シリマリンは補助の位置づけで使うのが妥当と考えられています。判断材料として、サイクル中盤の採血で AST/ALT が落ち着いていれば、シリマリンを追加する必要性は低いといえます。

Q2. NAC は肝臓に良いと聞きましたが、外す理由は? A. NAC は薬剤性肝障害(特にアセトアミノフェン過量)に対する解毒剤として救急医療で使用される実績があります。一方で、健常者がボディビル目的で常用するエビデンスは限定的で、抗酸化作用の過剰によりトレーニング適応(筋肥大シグナル)を鈍らせる可能性が指摘されています。サイクル中の常用必須サプリには入らない、というのが本記事の立場です。

Q3. 柴胡桂枝湯は風邪薬としてよく出ますが、本当に肝臓に悪いんですか? A. 柴胡を含む漢方処方は、日本国内で薬剤性肝障害の症例報告が複数あります。発症頻度は高くないものの、AAS との併用で肝酵素が上がっている状況で「漢方なら安心」と継続するのはリスク側に倒れます。風邪症状に対しての短期使用と、肝臓ケア目的の連用はまったく別物として扱うべきです。

Q4. 注射ステロイド(エナンセート系など)でも肝臓ケアは必要ですか? A. 注射型の AAS は経口 17α-アルキル化型と比べて肝臓への負担が小さいとされ、原則として強力な肝サポートは不要という考え方が主流です。ただし他の経口剤(オーラル系)を併用する場合や、もともと肝機能ベースラインが高い場合は UDCA を入れる選択肢があります。基本は「経口を使う期間だけ肝サポート」が現実的です。

Q5. 肝臓ケアを正しくやれば AST/ALT が全く上がらないようにできますか? A. 完全にゼロにするのは現実的ではありません。経口 AAS を使う以上、ある程度の AST/ALT 上昇は想定範囲内です。重要なのは「上がり幅をモニタリングして、危険域(目安として基準値の3倍以上が続く)に入る前に判断する」こと。「上げない」より「気づける」を優先する設計が安全です。

最後に

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