血液検査せずサイクル回して肝機能異常になった人の話|AST/ALT 200超えの実話
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「採血なんて、別にやらなくてもいいんじゃないか」。AAS(アナボリックステロイド)のサイクルを回したことがある人なら、一度は頭をよぎる考えかもしれません。何しろ自覚症状はゼロ、鏡の中の身体は過去最高、ジムでの挙上重量も伸び続けている。わざわざ平日に半休を取って病院に行くなんて、面倒以外の何物でもない——。
しかし、その「面倒だから」の積み重ねが、数か月後に会社の定期健診で「ALT 200超え、要再検査」の通知となって返ってくる例は珍しくありません。AAS、とくに経口剤(17αアルキル化された分子)の肝臓への負担は、自覚症状がほぼ出ないまま静かに進行するのが厄介なところです。
この記事では、血液検査を怠ったまま数サイクル続けた結果、肝機能の数値が大きく動いてしまった人の典型的な経過を再構成しつつ、なぜ起きるのか、どう対処したのかをまとめます。
結論
サイクル中の肝機能異常(AST/ALT 上昇)は、17α アルキル化系の経口 AAS(オキサンドロロン、スタノゾロール、メタンドロステノロン等)を継続使用した人で起きやすい現象です。多くの場合、自覚症状が出る前に数値だけが先行して悪化します。対処の基本は「使用の中止」「肝保護サプリ(TUDCA、NAC 等)の摂取」「医療機関の受診」の3点で、数値が動き始めてからの対応では遅れることもあります。サイクル前・中・後の定期採血こそが、長く続けるための最低条件です。
ある利用者の話:健診で「要精密検査」の通知が届くまで
ここで紹介するのは、海外フォーラムや国内コミュニティで繰り返し報告される「典型的な経過」を再構成した架空のケースです。特定の個人のものではありませんが、似た訴えは多く存在します。
サイクル開始時:自信満々のスタート
30代前半、ジム歴8年、ナチュラルでの限界をひととおり感じたタイミングで初サイクルを決意。選んだのはオキサンドロロン(アナバー)単体での経口サイクル。「軽い化合物だから採血までは要らないだろう」と判断し、開始前の血液検査もせずに開始しました。
用量は1日40mg、8週間の予定。SNS で見かける情報を頼りに、肝保護として市販の「ヘパリーゼ」だけは飲むことにしたものの、TUDCA(タウロウルソデオキシコール酸)や NAC(N-アセチルシステイン)といった本格的な肝サポートは「高いから後でいいか」と後回し。
4週目:体感は絶好調、しかし
ベンチプレスの記録が10kg伸び、体重は3kg増加。腕周りも目に見えて太くなり、本人いわく「これまでの努力は何だったのか」という手応え。体調にも違和感はなく、二日酔いのような倦怠感も、右上腹部の鈍痛もありませんでした。
「やはり経口剤は楽勝だ」と判断し、用量を50mgに増量。さらに「せっかくだから」と、知人から譲ってもらったスタノゾロール(ウィンストロール)25mgを後半に重ねることを決定。気づけば17α アルキル化系を2種類同時に走らせる構成になっていました。
8週目:サイクル終了、PCT開始
予定どおりサイクルを終え、PCT(ポストサイクルセラピー)としてクロミフェン(クロミッド)を開始。鏡の中の身体は満足のいく仕上がりで、本人としては大成功という認識。ジムでも「何やってんの?」と聞かれる頻度が増え、すっかり気を良くしていました。
サイクル後3か月:会社の定期健診
ここで初めて、AAS 使用と無関係なタイミングで血液検査を受けることになります。会社の年次健診、いつもどおりの採血。結果は2週間後に郵送で届きました。
封筒を開けると、「AST 180 U/L、ALT 240 U/L、要医療機関受診」の通知。基準値の上限(AST 30 前後、ALT 30 前後)を大きく超えており、肝臓専門外来への紹介状まで同封されていました。
このとき初めて、自分の肝臓に何が起きていたのかを真剣に調べ始めることになります。
なぜ起きたのか:17α アルキル化と検査怠慢の合わせ技
17α アルキル化(17aa)という構造
経口で吸収させるために多くの AAS は分子の17番目の炭素にメチル基を加える化学修飾を受けています。これが「17α アルキル化(略して 17aa)」と呼ばれる構造で、肝臓での初回通過代謝に耐えられるようになる代わりに、肝細胞への負担が増えることが知られています。
該当する代表的な化合物は以下のとおりです。
- オキサンドロロン(アナバー)
- スタノゾロール(ウィンストロール)
- メタンドロステノロン(ダイアナボル)
- オキシメトロン(アナドロール)
- メチルテストステロン
これらを使用すると、肝細胞内で胆汁うっ滞(胆汁の流れが滞る現象)が起きやすく、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)や ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)といった肝酵素が血中に漏れ出てくる傾向があります。海外の症例報告では、用量・期間・個人差はあるものの、17aa 経口剤の使用者で肝酵素上昇が観察されたケースが多数記述されています。
「軽い化合物」の落とし穴
オキサンドロロンは一般に「肝毒性が比較的マイルド」と語られることが多い化合物です。しかし「マイルド」は「無害」ではありません。用量が増えれば負担は増し、他の17aa と併用すれば負担はさらに増します。
このケースで起きたのは、まさにこの組み合わせでした。
- 開始用量40mg → 途中で50mgに増量
- 後半にスタノゾロール25mgを上乗せ
- 期間も予定の8週間をフル使用
- 肝保護は市販ドリンクのみで、TUDCA/NAC は未使用
それぞれは「ちょっとした油断」ですが、肝臓から見れば負荷が重なり続ける8週間です。
自覚症状の少なさという罠
肝機能異常のもっとも厄介なところは、「数値が動いてもしばらく自覚症状が出ない」点です。倦怠感、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる現象)、右上腹部の違和感などが出るころには、数値はかなり進行していることが多いといわれます。
「体調が悪くないから大丈夫」は、肝臓に関しては成り立ちません。痛みのセンサーが少ない臓器であり、サイレントに進行するのが特徴です。だからこそ、自覚に頼らず数値で見るための採血が必要になります。
ここからどう対処したか
まず使用の全面停止
通知を受け取った時点で、PCT 中のクロミフェンも含めて経口剤系はすべて停止。専門外来を受診し、肝機能パネルの再検査、超音波検査、ウイルス性肝炎の除外検査を受けることになりました。幸い B型・C型肝炎ウイルスは陰性、画像でも明らかな脂肪肝以外の所見はなく、薬剤性肝障害が強く疑われるという診断。
医師には「サプリメントを複数飲んでいた」と説明し、AAS の具体名は告げなかったものの、「市販品でも肝臓に来ることはある」として、まずは原因と思われるものをすべて中止して経過観察、という方針になりました。
肝保護サプリの導入
医師からの直接処方ではないものの、自主的に取り入れたものとして次の2つがあります。
- TUDCA(タウロウルソデオキシコール酸):胆汁の流れを助ける働きが報告されている胆汁酸の一種で、海外のボディビル界隈では肝保護目的で広く使われています。日本では医薬品としては未承認です。
- NAC(N-アセチルシステイン):グルタチオン(肝臓の抗酸化システムを支える物質)の前駆体として知られ、海外ではアセトアミノフェン中毒の解毒剤としても使われる成分です。
どちらも「飲めば必ず数値が下がる」という性質のものではありません。あくまで「肝臓の代謝負担を補助する可能性が報告されている」サプリメントであり、根本的な解決は「負荷をかけている薬剤を止める」ことです。
食事・睡眠・飲酒の見直し
アルコールは完全停止。揚げ物中心の食生活を見直し、たんぱく質源を鶏胸肉と魚に寄せ、野菜の量を増やしました。睡眠は最低7時間を確保。鎮痛剤(アセトアミノフェン)も極力使わないように。
これらは派手な対策ではありませんが、肝臓に追加の負担をかけない生活を作るという意味で、サプリより本質的な部分です。
3か月後の再検査
中止から3か月後の再検査で、AST 32 U/L、ALT 38 U/L まで戻りました。基準値の上限付近ですが、危険域は脱した数値です。半年後にはほぼ平常域に戻り、肝臓専門外来からも卒業。
ただし、本人いわく「次にサイクルを組むときは、絶対に開始前・中盤・終了直後の3回は採血する」とのこと。学んだ代償は、半年間のトレーニング停滞でした。
同じ轍を踏まないための4つの最低ライン
このケースから引き出せる教訓を、4点にまとめます。
1. 採血はサイクルの一部だと考える
「やったほうがいい」ではなく「やらないと始まらない」。開始前の基礎値、中盤の経過確認、終了直後の状態、PCT 後の回復確認。最低でもこの4タイミングは必要だと考えるユーザーが多いです。
2. 17aa の連用・併用に上限を設ける
経口剤を複数同時に走らせる構成は、肝臓視点では負荷の倍加です。海外フォーラムでも、17aa の同時使用は4-6週で切り上げる、という運用が一般的とされます。
3. 肝保護は市販ドリンクでは足りない
「飲んでおけば大丈夫」と思いがちなコンビニ系ドリンクは、エビデンスの厚みでいうと TUDCA や NAC とは別物です。「保険」と呼ぶには弱すぎる、というのが海外コミュニティの一般的な見方です。
4. 自覚症状を当てにしない
倦怠感、食欲低下、右上腹部の違和感、尿の色、皮膚や白目の黄ばみ。これらが出るころにはかなり進行しています。数値が動いていても自覚ゼロのことが多い、という前提で動くのが安全です。
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LINEでガイドを受け取るFAQ
Q1. AST/ALT がどれくらいから「やばい」のですか? A. 一般に基準値の上限(AST/ALT ともに 30-40 U/L 前後、検査機関により差あり)の3倍を超えると医療機関受診を勧められるラインとされます。200を超えるような数値は明らかに異常域で、早期に薬剤の中止と検査が必要です。自己判断はせず、医師に相談してください。
Q2. 注射剤(エナンセート、シピオネート等)なら肝臓は安全ですか? A. 17α アルキル化されていない注射剤は、経口剤に比べれば肝臓への負担は軽いとされます。ただし「ゼロ」ではなく、コレステロール値や赤血球数など他の指標が動くため、採血を省略していい理由にはなりません。
Q3. TUDCA や NAC はいつから飲み始めればいいですか? A. 17aa 経口剤を使うサイクルでは、サイクル開始と同時、または数日前から開始するユーザーが多いです。サイクル後も数週間継続する例が一般的です。あくまでサプリメントであり、医薬品ではない点には注意が必要です。
Q4. 健診で引っかかったとき、AAS のことを医師に言うべきですか? A. 治療方針の判断材料として正確な情報を提供する意義は大きいです。守秘義務がある医師に対して、使用した化合物・用量・期間を伝えたほうが、ウイルス性肝炎などの不要な検査を避けられる場合もあります。判断は本人に委ねられますが、「正直に話したほうが結果として早く回復した」というユーザーの声は多いです。
Q5. 数値が戻れば、また同じサイクルを組んでも大丈夫ですか? A. 一度肝酵素が大きく動いた人は、同じ化合物・同じ用量で再度上昇しやすい傾向があるといわれます。再開する場合は、用量を下げる、17aa の同時使用を避ける、肝保護サプリを最初から入れる、採血を必ず実施する、といった条件の見直しが必要です。「前回大丈夫だったから今回も」とはならない、という前提で組むのが現実的です。
さいごに
サイクルの満足度は、見た目の仕上がりだけで決まりません。半年後、1年後、5年後に同じことを続けられているかどうか、までを含めて評価するものです。
採血をサボることで節約できる時間は、せいぜい半休1日分。それと引き換えに失うかもしれないのは、半年から1年のトレーニング期間と、検査費用と、家族の心配。割に合う計算ではありません。
「面倒だから」ではなく「面倒でもやる」の側に立てるかどうか。長く続けている人ほど、ここで手を抜きません。