AASやってて血液検査を全くやらなかった人の話
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リード
AAS(アナボリックステロイド、筋肉増強目的で使われる合成男性ホルモン製剤)を使っている人の中には、「血液検査なんて面倒だし、調子が悪くなければいらないだろう」と考える人が一定数います。SNSやジムの仲間内でも「採血一度もやってないけど元気だよ」という声を聞くことがあります。
ところが、AASを使い始めて数年経った頃に、自覚症状ゼロのまま検査値だけが大きく崩れている、というケースは珍しくありません。本記事では、5サイクル連続で血液検査を回避し続けた30代男性の事例をベースに、なぜ採血を飛ばすと危険なのか、どの項目をどの頻度で測ればよいのかを整理します。AASを継続している人、これから始めようと考えている人の判断材料になれば幸いです。
結論
AAS使用中の血液検査を完全に飛ばすと、自覚症状が出る前に脂質代謝・肝機能・赤血球数が静かに悪化している可能性があります。特にHDLコレステロール(善玉コレステロール)の低下と赤血球増多は無症状で進むため、本人が気付いたときには医療介入が必要な水準になっていることがあります。最低でもサイクル前・サイクル中盤・サイクル終了後の年3〜4回、肝機能・脂質・血球・ホルモン関連の項目を測ることが、長期的に身体を保つうえでの現実的なラインです。
5サイクル連続で採血を飛ばした人に起きたこと
ここでご紹介するのは、20代後半からAASを始め、30代前半までに5サイクルを回したものの、一度も血液検査を受けなかった男性のケースです。本人の許可を得て、健康診断で偶然見つかった数値を一部紹介します。
きっかけは会社の定期健診
この方は、勤務先で義務化された定期健康診断で採血を受け、後日「再検査」の通知を受け取りました。自覚症状はまったくなく、トレーニングのパフォーマンスもむしろ過去最高に近い時期だったといいます。
再検査で指摘された主な所見は次の3つでした。
- HDLコレステロール 5mg/dL(基準値は男性で40mg/dL以上)
- ヘマトクリット値 54%(基準値の上限を超過)
- AST/ALT(肝機能を示す酵素)が基準値の3倍前後
HDLが一桁という数値は、循環器内科の医師から見ても異例の低さです。担当医からは「この値で心筋梗塞や脳梗塞を起こしていないのが不思議」と言われたとのことです。
本人の主観と検査値のギャップ
注目すべきは、本人にまったく自覚症状がなかった点です。胸の違和感も、息切れも、倦怠感もなく、ベンチプレスは伸び続け、体組成も理想に近づいていました。AASを使ったことのある人なら共感できると思いますが、サイクル中は気力・体力ともに高い水準にあるため、「不調」と感じるサインそのものが鈍くなります。
つまり、AAS使用者にとって「調子がいい」は、健康指標としてほとんど当てになりません。検査値だけが正直に身体の状態を語ります。
なぜ自覚症状なしで進行するのか
血液検査を軽視する人がよく口にするのが「異常があれば身体が教えてくれるはず」という発想です。しかし、AAS使用に伴う検査値の変化は、初期段階では症状として現れにくいという特徴があります。
脂質異常は痛みを伴わない
HDLコレステロールの低下やLDLコレステロール(悪玉コレステロール)の上昇は、痛みも違和感も伴いません。冠動脈に変化が起き始めても、本人は気付かずトレーニングを続けられます。米国心臓協会(AHA)の一般向け資料でも、脂質異常症は「沈黙の状態」として注意喚起されています。
赤血球増多も日常感覚では拾えない
AASの多くはエリスロポエチン(腎臓で作られる赤血球産生ホルモン)の働きを介して赤血球を増やす方向に作用します。ヘマトクリット値(血液中の赤血球の体積比率)が55%を超えてくると、血液が粘っこくなり血栓リスクが上がるとされていますが、本人は「今日もパンプ感が強い」程度にしか感じません。
肝機能は経口剤で出やすい
注射タイプのAASよりも、メチル基修飾された経口AAS(オキサンドロロン、スタノゾロール、ダナゾール等)で肝酵素の上昇が出やすいことが知られています。とはいえ、軽度〜中等度の肝機能異常は症状を伴わないため、検査でしか把握できません。
「不調」を感じた時点でかなり進んでいる
頭痛、めまい、強い倦怠感、黄疸といった分かりやすい症状が出る頃には、検査値はすでにかなり悪化している段階に入っています。AAS使用者のセーフティラインは、症状で判定するのではなく数値で先回りすることに尽きます。
採血で最低限押さえたい項目
「とりあえず一般的な健康診断と同じ項目を見ればいい」と考える人もいますが、AAS使用者の場合はもう少し踏み込んだ項目を確認しておきたいところです。海外のAGA・男性ホルモン治療のクリニックでも一般的に測られているパネルを参考に整理します。
脂質パネル
- 総コレステロール
- LDLコレステロール
- HDLコレステロール
- 中性脂肪(トリグリセリド)
特にHDLは、AASによって短期間で大きく下がることが報告されている項目です。経口剤を使うサイクルでは数週間で半分以下になることもあります。
肝機能
- AST(GOT)
- ALT(GPT)
- γ-GTP
- ALP
筋トレ直後に採血すると筋由来でASTが上がるため、採血前48時間程度は高強度トレーニングを避けると数値が読みやすくなります。
血球関連
- 赤血球数
- ヘモグロビン
- ヘマトクリット
ヘマトクリットが52〜54%を超えてきた場合、献血(医療機関の指示があれば瀉血)で下げる選択肢が一般的に紹介されています。
ホルモン関連
- 総テストステロン
- 遊離テストステロン
- エストラジオール(E2、女性化を抑える上で重要な指標)
- LH/FSH(脳から精巣へ送られる指令ホルモン、自前のテストステロン分泌の状態を見るために必要)
- プロラクチン(19-ノル系AASを使う人は特に)
- SHBG(性ホルモン結合グロブリン)
サイクル後のPCT(ポストサイクルセラピー、自分のテストステロン分泌を回復させる期間)の進行度を判断する際にも、LH/FSHと総テストステロンの推移が役立ちます。
腎機能・血糖
- クレアチニン
- eGFR
- 空腹時血糖
- HbA1c
クレアチニンは筋肉量に比例して高めに出るため、AAS使用者では「軽度高値=即異常」とは限りません。eGFRや尿検査と合わせて判断します。
採血の頻度と現実的な運用
「項目は分かったが、毎月測るのは現実的に難しい」という声はよく聞きます。実際、自費で測れば1回1〜2万円規模になります。サイクルの設計に合わせて頻度を組むのが現実的です。
年4回パターン(推奨)
- サイクル開始の2〜4週間前(ベースライン)
- サイクル中盤(4〜6週目あたり)
- サイクル終了直後(PCT開始前)
- PCT終了後1〜2ヶ月(回復確認)
このパターンであれば、悪化の速度・PCT後の戻り具合の両方が見えます。
年2回パターン(最低限)
サイクルを年に1回程度しか回さない場合、サイクル中盤とPCT後の2回でも、致命的な見逃しは防ぎやすくなります。
検査ルート
- 一般的な内科クリニックでの自費採血
- 男性ホルモン治療を扱うクリニック(項目が揃っている)
- 郵送検査キット(精度や項目は商品により差があるため確認が必要)
会社の健康診断は項目が限定的なので、AAS使用者にとっては「補助」と捉え、別途自分で組んだパネルを回すのが安全です。
ケア剤の活用と検査値の関係
AASによる脂質・肝機能の悪化は、ある程度ケア剤で緩和できるとされています。たとえば、肝臓の胆汁うっ滞を改善する目的で使われるウルソデオキシコール酸、エストラジオールを管理するアロマターゼ阻害剤、PCTで使われるクロミフェン・タモキシフェンなどです。
ただし、ケア剤を使っていれば検査が不要になるわけではありません。むしろ、ケア剤の効きを評価するためにこそ、採血が必要になります。「飲んでいるから大丈夫」ではなく「飲んだ結果どう動いたか」を数値で確認するのが、長期的に身体を維持するうえでの現実的なアプローチです。
注射AASを使う人向けには、肝臓・脂質・血圧・PCTまでを一通り含む注射ステロイド向け ケア剤セットプロのようなセット商品も流通しています。サイクル前にケア剤と採血のスケジュールを合わせて組んでおくと、後から慌てずに済みます。
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LINEでガイドを受け取るFAQ
Q1. AASをやっていることを医師に話したくないのですが、採血だけ受けても意味はありますか? A. 数値そのものは取得できるので、自己管理の材料としては十分意味があります。ただし、医療判断(瀉血が必要な水準か、循環器の精査が必要かなど)を仰ぐ場面では、AAS使用の事実を伏せると適切な判断につながりにくくなります。男性ホルモン治療やAGA治療を扱うクリニックは比較的話しやすい環境です。
Q2. 健康診断でHDLが低いと指摘されました。どのくらいから危険ですか? A. 一般的にHDL40mg/dL未満で「低HDLコレステロール血症」とされ、心血管疾患のリスク因子として扱われます。20mg/dLを下回るような水準では、循環器内科での評価を受けることが推奨されます。
Q3. ヘマトクリットが上がってきたら、どうすればよいですか? A. 水分摂取を増やすこと、サイクル用量を見直すこと、そして医療機関での相談が基本線です。海外のTRT(男性ホルモン補充療法)プロトコルでは、ヘマトクリット54%超で治療一時中止や瀉血を検討するという記述があります。
Q4. 経口剤を短期間しか使わない場合でも採血は必要ですか? A. 4〜6週間の短期サイクルでも、肝機能とHDLは明確に動きます。サイクル前後の2点だけでも測っておくと、自分の身体の反応傾向を把握できます。
Q5. 採血の前日は何に気を付ければよいですか? A. 高強度トレーニングは48時間前から避けると肝酵素や筋由来酵素のノイズが減ります。アルコールも前日は控えるのが無難です。空腹時の項目(脂質・血糖)を測る場合は、検査機関の指示に従って絶食時間を確保してください。
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