AASユーザーの血圧管理 高血圧を防ぐ生活習慣と薬
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サイクル中に血圧計の数値を見て驚いた、頭が重く感じる日が増えた、ジムで挙上中に妙にこめかみが脈打つ — AAS(アナボリックステロイド、男性ホルモン系の筋肉増強剤)を使い始めてから、こうした自覚に直面する人は少なくありません。血圧上昇はAASの副作用のなかでも非常に頻度が高く、放置すると心肥大や腎機能低下といった中長期のダメージにつながります。それでもバルクアップの数字は伸ばしたい。この記事では、AASでなぜ血圧が上がるのかという仕組みから、家庭での測定タイミング、介入が必要な数値の目安、生活習慣での対処、そしてARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬、降圧薬の主流カテゴリ)の使い方まで、サイクルを止めずに血圧をマネジメントするための実践情報をまとめます。
結論
AASによる血圧上昇は、塩分と水を体に溜め込む作用(水分貯留)と、酸素運搬を担う赤血球が増えすぎて血液の粘度が上がる作用(多血症)、この2つが主な引き金です。家庭血圧で連日135/85mmHg以上、もしくは診察室血圧で140/90mmHg以上が続くなら、生活習慣の見直し(減塩・有酸素・体重コントロール)とARBを中心とした降圧薬の併用を検討する段階です。サイクル前のベースライン測定、サイクル中の毎朝定点測定、PCT(ポスト・サイクル・セラピー、サイクル後の回復期)までフォローする一連の流れを習慣化することが、心血管リスクを最小化する現実的なアプローチです。
なぜAASで血圧が上がるのか 2つの主な機序
AAS使用中の血圧上昇は、単一の経路ではなく、複数の生理反応が重なって起きます。なかでも臨床的に重要なのが「水分貯留」と「多血症」です。
水分貯留(ナトリウム・水の保持)
テストステロンやその誘導体は、腎臓でナトリウム(塩分の主成分)の再吸収を促す方向に働きます。さらに、芳香化(アロマタイゼーション、テストステロンがエストロゲンに変換される代謝経路)を経て生じるエストラジオールも、同じくナトリウム保持を強めます。結果として体内の循環血液量が増え、血管内の圧力が上がります。テストステロン・エナンセートやサスタノンなど芳香化しやすい化合物、ダイアナボル(メタンジエノン)やアナドロール(オキシメトロン)といった経口剤で、この水分貯留型の血圧上昇は特に顕著に出やすいと報告されています。
体重計に乗ったときの「数日で2〜3kg増えた」「顔がむくんで見える」といったサインは、筋量増加だけでなく水分貯留の指標でもあります。
多血症(赤血球増加による血液粘度上昇)
AASは骨髄での赤血球産生を刺激し、ヘマトクリット(血液中の赤血球の割合)を押し上げます。ヘマトクリットが上がると血液はドロドロになり、同じ心拍出量でも血管壁にかかる圧力が増します。男性で50〜52%を超えてくると、医師が瀉血(しゃけつ、血液を抜く処置)や用量調整を検討するゾーンに入ります。多血症型の血圧上昇は、テストステロン全般、トレンボロン、マステロンなど多くのAASで起こり得ます。
その他の補助的な要因
- 交感神経系の活性化(攻撃性や心拍数の上昇とリンク)
- 内皮機能(血管の内側の細胞の働き)の悪化
- LDLコレステロールの上昇に伴う動脈硬化進行
- クレンブテロールやエフェドリン系の併用による直接的な血管収縮・心拍増加
これらは単独で大きな寄与をすることもあれば、水分貯留・多血症と重なってさらに数値を押し上げることもあります。
血圧の測定タイミングと記録方法
「血圧が高そう」という体感ではなく、数値で管理することが基本です。家庭血圧計(上腕式、カフを二の腕に巻くタイプが推奨)を一台用意し、以下のリズムで記録します。
朝の測定(最重要)
起床後1時間以内、排尿を済ませてから、座って1〜2分安静にしてから測定します。朝食・コーヒー・トレーニング前のタイミングがベストです。連続2回測って平均を取ると数値が安定します。
夜の測定
就寝前、入浴後30分以上経ってから、同じく座って安静にしてから測ります。トレーニング直後の測定は数値が大きく振れるため、評価には向きません。
記録項目
- 日付・時刻
- 上の血圧(収縮期)
- 下の血圧(拡張期)
- 心拍数
- その日のサイクル週数・主要化合物・用量
- 体重(同じタイミングで)
スマホのメモアプリでも、血圧手帳アプリでも構いません。数値の単発ではなく、1〜2週間の傾向を読む発想が重要です。
介入が必要な数値の目安
日本高血圧学会のガイドラインでは、診察室血圧140/90mmHg以上、家庭血圧135/85mmHg以上を高血圧と定義しています。AASユーザーが自己管理の参考にする閾値は次のとおりです。
グリーンゾーン(継続観察)
家庭血圧で平均130/80mmHg未満。サイクルを継続しつつ、週に数回の有酸素と塩分量の意識で維持を狙う段階です。
イエローゾーン(生活習慣で介入)
家庭血圧で平均130〜139/80〜89mmHg。減塩、減量、有酸素運動の増量、睡眠時間の確保といった生活面の改善を優先します。芳香化しやすい化合物の用量見直しや、AI(アロマターゼ阻害薬、アナストロゾール等)の調整も選択肢に入ります。
オレンジゾーン(降圧薬の検討)
家庭血圧で平均140/90mmHg以上が2週間続く場合、生活習慣の介入だけでは追いつかない可能性が高いゾーンです。ARBを中心とした降圧薬の併用が現実的になります。並行して、ヘマトクリットや脂質パネル、肝腎機能の血液検査を受けることが推奨されます。
レッドゾーン(医療機関へ)
160/100mmHg以上、または頭痛・視野異常・胸痛・動悸といった症状を伴う場合は、サイクル中断を含めて医師の判断を仰ぐ段階です。AAS使用の事実を伝えることに抵抗があっても、心血管イベントのリスクを考えれば隠さずに相談するほうが安全です。
生活習慣でできる血圧対策
降圧薬に頼る前に、まず食事と運動の見直しで何mmHg下げられるかを試す価値があります。AASを使っているからこそ、生活面の余白を残しておくと、後で薬を足したときの効きも実感しやすくなります。
減塩(1日6g未満を目標)
加工食品、外食、プロテインバー、缶詰のツナ、コンビニのチキン、調味料のかけすぎが主な落とし穴です。栄養成分表示の「食塩相当量」を見る癖をつけると、思った以上に隠れた塩分が見えてきます。和食の汁物・漬物・干物も注意したいカテゴリです。
カリウムを増やす
カリウムはナトリウムの排出を促す方向に働きます。バナナ、アボカド、ほうれん草、トマト、じゃがいも、納豆などを意識的に摂ります。ただし腎機能が落ちている場合はカリウム制限が必要になるため、血液検査の結果と合わせて判断します。
有酸素運動(週3〜5回・30分以上)
ウェイトトレーニングだけだと血圧への効果は限定的です。サイクル中はウォーキング、エアロバイク、傾斜トレッドミルといった中強度の有酸素を別枠で組み込みます。心拍が110〜130bpm程度に乗る強度を目安にすると、収縮期血圧で平均5〜10mmHg程度下がるという報告が複数あります。
体重コントロールと水分
過度の増量は、筋肉だけでなく内臓脂肪と水分も増やします。腹囲が増えていく増量よりも、リーンバルクを意識した方が血圧的には有利です。水分は1日2〜3Lを目安に。脱水は血液粘度を上げ、結果的に多血症型の血圧上昇を悪化させます。
睡眠・アルコール・カフェイン
睡眠不足は交感神経を持続的に高めます。最低7時間を確保したい。アルコールは1日純アルコール20g(ビール中瓶1本程度)以下、プレワークアウトのカフェインは血圧に乗りやすいタイミング(朝の測定前)を避ける運用が現実的です。
ARB系降圧薬の使い方
生活習慣の見直しでも140/90mmHgを切れない場合、薬剤での介入が選択肢になります。AASユーザーがよく検討するのがARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)です。
ARBが選ばれる理由
ARBは、血管を収縮させるアンジオテンシンIIというホルモンの作用をブロックすることで血圧を下げます。空咳の副作用が少なく、腎保護作用も期待できることから、第一選択薬として広く使われています。代表的な成分名は次のとおりです。
- テルミサルタン
- ロサルタン
- バルサルタン
- カンデサルタン
- オルメサルタン
- イルベサルタン
これらは日本では医療用医薬品として承認されており、海外でも長期の使用実績があります。AASによる水分貯留型・血管緊張型の双方に対応しやすい点も、ボディビル文脈で支持される理由です。
よくある副作用と注意点
めまい・立ちくらみ(特に飲み始め)、高カリウム血症、まれに腎機能低下が知られています。カリウムを多く含むサプリ(K含有量の多いマルチビタミン)との併用は、医師の確認を取ったほうが安全です。脱水状態での服用は血圧が下がりすぎることもあり、ハードな有酸素や長風呂の直後は注意します。
当サイトでの取扱状況
ARB系降圧薬・利尿薬(スピロノラクトン等)は、現時点で当サイトでは取扱いがありません。降圧薬の入手については医療機関での処方、または医師に相談のうえ入手方法を判断する形になります。AAS本体やPCT薬・AI薬の手配と並行して、降圧薬の入手ルートを事前に確保しておくと、数値が上がってから慌てずに済みます。
利尿薬を「むくみ取り」で使う発想は避ける
ループ利尿薬やサイアザイド系を血圧管理ではなくコンテスト前の絞り目的で短期使用するケースが知られていますが、電解質バランスを大きく崩し、心停止リスクを伴うため、自己判断での運用は推奨されません。降圧目的とコンテストドライ目的は明確に分けて考えるべきカテゴリです。
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LINEでガイドを受け取るFAQ
Q1. サイクル前に血圧が正常でも、毎朝測る必要はありますか? A. はい、推奨されます。サイクル開始後2〜4週で水分貯留型の上昇が表面化することが多く、ベースラインからの変化幅を把握するために定点観測が役立ちます。最低でも週3回、できれば毎朝の測定が目安です。
Q2. クレンブテロールやエフェドリンを使うときの血圧対策は? A. これらは交感神経を直接刺激し、心拍数と収縮期血圧を一気に押し上げます。AAS単体よりも数値の振れ幅が大きくなるため、開始用量を低めにし、心拍が安静時で90bpmを超える場合は減量・中断を検討します。ARBで土台の血圧を下げていても、ピーク時の上昇は別問題として捉える必要があります。
Q3. プロホルモンやSARM(選択的アンドロゲン受容体調節薬)でも血圧は上がりますか? A. 上がります。SARMはAASほどではないものの、RAD-140やLGD-4033などで血圧上昇の報告があります。「マイルドだから血圧は測らなくていい」という発想は危険です。
Q4. 瀉血(献血)は血圧管理に有効ですか? A. 多血症型の上昇に対しては有効な選択肢です。ヘマトクリットが52%を超えるようなケースで、献血または医療機関での瀉血を3〜6ヶ月ごとに行うことで、粘度由来の血圧上昇は緩和されます。ただし水分貯留型には効果が限定的で、減塩やARBとの組み合わせが必要です。
Q5. PCTに入れば血圧は自然に戻りますか? A. 多くの場合、サイクル終了から数週間〜数ヶ月で改善傾向に向かいますが、戻り方は個人差が大きい領域です。PCT期間中も測定は継続し、3ヶ月経っても135/85mmHgを切らない場合は、医療機関での評価を受けることが推奨されます。