AAS中の血圧180超で救急搬送された人の話

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リード

「サイクル中になんとなく頭が重い」「夜になると心臓がドクドクする」——AAS(アナボリックステロイド、筋肉合成を促す合成男性ホルモン)を使っている最中に、こうした違和感を抱えたまま放置している方は少なくありません。実際、AAS使用中の高血圧は副作用のなかでも頻度が高く、無症状で進行することもあれば、ある日突然180mmHgを超えて救急搬送に至るケースもあります。

この記事では、実際にサイクル中に血圧が急上昇して救急搬送されたケースをもとに、なぜAAS使用中に血圧が跳ね上がるのか、どの段階で危険サインを察知すべきか、搬送後にどう対応すれば良いのかを整理します。AASを使うかどうかは最終的に本人の判断ですが、「数字を測っていない」「気のせいだと思っていた」という状態だけは避けたい——そういう温度感で読んでいただければと思います。

結論

AAS使用中の高血圧は、(1)体液貯留(ナトリウムと水分の保持増加)と(2)レニン・アンジオテンシン系の亢進、(3)血管内皮機能の低下が重なって起こる多因子の現象です。180/110mmHgを超えるような数値は「高血圧緊急症」の入り口であり、頭痛・視覚異常・胸の圧迫感を伴うなら即受診が原則です。サイクル中は週2回以上の家庭血圧測定、140/90mmHgで一時中断検討、160/100mmHgでサイクル中止と医師相談、というラインを目安に運用するのが現実的です。

H2: 実例:180/110で救急搬送された30代男性のケース

ここで紹介するのは、海外フォーラムや国内コミュニティで散見される典型的な経過を再構成したものです。個人を特定するものではなく、あくまで「こういう経過をたどることがある」という参考事例として読んでください。

経過

30代前半、トレーニング歴8年、体重82kg。テストステロン エナンセート週500mg、ナンドロロン デカノエート週300mgの併用サイクルを開始。1週目から2週目にかけて体重が3kg増加(うち多くは水分と推測)、4週目あたりから「枕に頭を乗せると後頭部が脈打つ」「ジムでセット間に動悸が長引く」という症状が出現。

5週目の夜、自宅で測定した家庭血圧計の数値が 収縮期180mmHg / 拡張期110mmHg。冷や汗と強い頭痛、軽い視界のチカチカを伴い、家族の判断で救急要請。搬送先の救急外来で降圧点滴を受け、CTで脳出血が除外されたあと、6時間後に130mmHg台まで低下して帰宅。担当医からは「サイクルは全部やめてください」と明確に指示された、というのが大筋です。

何が引き金だったか

このケースで医師から指摘されたのは、(1)塩分摂取が一日12g前後と多かったこと、(2)有酸素運動をほぼ行っていなかったこと、(3)カフェイン入りプレワークアウトを高用量で常用していたこと、の3点でした。AAS単独で180まで跳ねるというよりも、AASが押し上げたベースラインに生活習慣のスパイク要因が乗ったときに、急性の血圧上昇が顔を出すという構造です。

H2: なぜAAS使用中に血圧が上がるのか

血圧上昇のメカニズムは一つではありません。代表的な3経路を整理します。

1. ナトリウムと水分の貯留

AAS、特にテストステロンやナンドロロンといった芳香化(エストロゲンへの変換)を起こす化合物は、エストロゲンが上昇することでアルドステロン(腎臓でナトリウムと水分を再吸収させるホルモン)が増加しやすくなります。結果として循環血液量が増え、心拍出量が上がる方向に働きます。サイクル開始から数週で2-4kg体重が増えた場合、その多くは水分と考えるのが妥当です。

2. レニン・アンジオテンシン系の亢進

レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS、血圧と体液量を調節するホルモン系)はAASの影響で活性が上がることが報告されています。アンジオテンシンII(血管を強く収縮させる物質)が増えることで、末梢血管抵抗が上昇し、拡張期血圧が押し上げられます。

3. 血管内皮機能の低下とLDL/HDL比悪化

AAS使用者の多くでHDLコレステロール(善玉)が大きく低下し、LDLコレステロール(悪玉)が上昇します。これに伴って血管内皮機能(血管が必要に応じて広がる能力)が落ち、慢性的に血圧を上げやすい状態になります。サイクルを繰り返すほど、ベースラインの血圧が高めに固定されていく傾向があります。

化合物による差

経口17α-アルキル化された化合物(メタンドロステノロン、オキシメトロン、スタノゾロール等)は、注射剤よりも血圧上昇幅が大きい傾向が知られています。トレンボロンも血圧・心拍数への影響が強い化合物として頻繁に話題に上ります。一方、テストステロン エナンセート単剤・中用量(週250-500mg程度)であれば、生活習慣管理ができていれば致命的な血圧上昇は起こりにくい、というのが一般的な感覚です。

H2: 危険サインと家庭での測定ルール

「数字を測っていない」が最大のリスクです。サイクル中は次のルールで運用するのが現実的です。

測定タイミング

  • 朝起床後、トイレを済ませた直後、座って5分安静の状態で1回
  • 就寝前、入浴とトレーニング後30分以上空けて1回
  • 週2-3回以上、サイクル開始2週前から記録を残す

数値の目安(あくまで一般的な指標)

収縮期/拡張期 状態 行動
130/85未満 許容範囲 継続+記録
140/90 高値 塩分・カフェイン見直し、有酸素追加
150/95 要注意 用量減または中断検討
160/100 危険 サイクル中止、医師相談
180/110以上 緊急 受診、頭痛・視覚異常があれば救急要請

同時に出たら即受診の症状

  • 殴られたような強い後頭部痛
  • 視界がぼやける、二重に見える
  • 胸の圧迫感、左肩や顎への放散痛
  • 片側の手足の脱力、ろれつが回らない
  • 鼻血が止まらない

これらは高血圧緊急症や脳血管・心血管イベントの初期サインのことがあります。「サイクル中だから病院に行きにくい」という心理は理解できますが、命より優先順位の高い秘密はありません。

H2: 救急搬送された後にどう対応するか

実際に搬送された場合、その後の動き方も重要です。

医師には正直に伝える

AASの使用を隠したまま検査・治療を受けることは、診断ミスや薬剤の相互作用リスクを上げます。日本では個人輸入での自己使用は違法ではなく、医師が通報する義務もありません。使っている化合物名、用量、開始時期は紙にメモして渡すのが最もスムーズです。

降圧薬は自己判断で開始しない

カルベジロール、テルミサルタン、アムロジピンなど、AAS使用者コミュニティで話題になる降圧薬はいくつかありますが、自己判断での開始は副作用と離脱リバウンドのリスクがあります。救急外来で処方された薬を継続するか、循環器内科で再評価を受ける流れが安全です。

サイクルは原則「中止」

180を超えた経験がある時点で、そのサイクルは継続しないという判断が現実的です。エステル(長く効くタイプの注射剤)の場合、最後の注射から血中濃度が下がりきるまで数週間かかりますので、その間も血圧モニタリングは続ける必要があります。PCT(ポストサイクルセラピー、サイクル後のホルモン回復期間)中は内因性テストステロンが戻るタイミングで血圧が一度下がることが多いですが、塩分管理は緩めないほうが安全です。

次のサイクルに進む前にやること

  • 24時間自由行動下血圧測定(ABPM)
  • 心エコー(左室肥大の有無確認)
  • 脂質パネルとhsCRP(炎症マーカー)
  • 腎機能(クレアチニン、尿アルブミン)

これらが落ち着いてから、用量と化合物選択を見直す——というのが、長く続けたい人ほど採用している流れです。

H2: 血圧を上げにくくする実務的な工夫

完全に上げないことはできませんが、上げ幅を抑える工夫はあります。

塩分と水分

ナトリウム摂取は1日6g未満を目標に。プロテイン、ジャーキー、外食は塩分が積み上がりやすいポイントです。水分は1日3-4L、こまめに分けて摂ることで循環血液量を保ちつつ腎臓の負担を減らします。

有酸素運動

週3回、心拍数120-140bpmで20-30分の有酸素を入れるだけで、家庭血圧が5-10mmHg下がる例は珍しくありません。ジムでのレジスタンストレーニングだけでは血圧対策として不十分です。

刺激物の整理

プレワークアウトに含まれるカフェイン、ヨヒンビン、シネフリンは交感神経を強く刺激します。サイクル中はカフェイン1日200mg未満、プレワークアウトは半量からが無難です。エフェドリン系、クレンブテロールとの併用はリスクが累積します。

睡眠と呼吸

睡眠時無呼吸(寝ている間に呼吸が止まる状態)はAAS使用者で増えることが知られており、これ自体が血圧を押し上げます。いびきが強くなった、日中の眠気が強い場合は睡眠検査の受診が勧められます。

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FAQ

Q1. テストステロン単剤・週250mgでも血圧は上がりますか? A. 個人差はありますが、芳香化による軽度のエストロゲン上昇とアルドステロン増加は起こり得ます。家庭血圧で5-10mmHg程度の上昇は珍しくなく、塩分管理と有酸素運動で吸収できる範囲が多いです。元々高血圧傾向がある場合は別途医師相談が必要です。

Q2. 血圧計はどれを買えばいいですか? A. 上腕式のカフ型で、医療機器認証を取得しているものを選んでください。手首式は姿勢で誤差が出やすく、サイクル管理用途には不向きです。同じ機種で記録を取り続けることが重要です。

Q3. 救急で「ステロイドを使っている」と言ったら警察に通報されますか? A. 日本では、自己使用目的での医薬品個人輸入は違法ではなく、医師に通報義務もありません。販売・譲渡は別問題ですが、自己使用を正直に伝えることで適切な治療を受けられる利益のほうが大きいと考えられます。

Q4. 降圧薬を予防的に飲みながらサイクルを回すのはアリですか? A. 一部の上級者コミュニティで語られる戦術ですが、薬は副作用も持っており、循環器内科の管理下でない自己処方は推奨できません。まずは家庭血圧測定と生活習慣の見直しが先になります。

Q5. 一度180まで上がった人は、もうAASは無理ですか? A. 必ずしも永久に不可ではありませんが、化合物選択(芳香化しにくいもの、経口17αアルキル化を避ける)、用量を大きく下げる、サイクル長を短くする、サイクル間を十分空ける、心血管検査を定期的に行う、といった条件付きでの再開が現実的です。何より「次に180が出たら次は無事に帰ってこられないかもしれない」という前提で組む必要があります。

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